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2015年6月

2015年6月 9日 (火)

ジョイント・ベンチャーの形態(1)-法務的観点からの考察

日本企業がオーストラリアに投資する場合、オーストラリア又はその他の国の企業と共同出資(ジョイント・ベンチャー)によってビジネスを行うことがあります。特に大規模な資源・インフラ・不動産開発プロジェクト等でジョイント・ベンチャーは多く見られます。

 

ジョイント・ベンチャーの形態には、大きく分けて、Incorporated Joint-VentureUnincorporated Joint-Venture及び信託(Unit Trust)の3種類があります。これらの3種類のジョイント・ベンチャーの形態について、以下の表のとおり、法務的観点からの考察をまとめてみました(この他にもパートナーシップといった形態もありますが、あまり実務では使用されていないのでここでは割愛します)。 

 

 

 

 
 

Incorporated JV

 
 

Unincorporated JV

 
 

信託(Unit Trust

 
 

概要

 
 

「会社」をJVEntityとして使用し、JV当事者は当該会社に対して出資をすることによってJV関係を構築します。

 

 

 
 

JVEntityを作らず、JV当事者の間でJVの権利・義務関係を規律するJV契約を締結し、当該契約に従ってJV当事者がJVビジネスを行うものです。これは簡単に言うと、JV当事者間で共同でビジネスを行うJV契約を締結しただけのJVになります。

 

 

 
 

JV当事者間で出資をして信託の受託者となる会社を設立します(この会社はCorporate Trusteeといわれます)。この会社は最小限の資本金(各JV当事者が1ドルずつ出資する等)によって設立されるのが通常です。JV当事者はこの会社を受託者として財産(金銭等)を出資し、これを信託財産とします。受託者はこの信託財産を使ってJVビジネスを行います。受益者であるJV当事者は受託者に対する指示を出して、JVビジネスをコントロールすることになります。

 
 

法人格

 
 

JVは会社ですので、法人格を有し、JVの権利・義務はJV会社に帰属することになります。

 
 

JVに法人格はなく、JVの権利・義務は全てJV当事者に直接に帰属することになります。

 
 

信託(Unit Trust)には法人格はありませんが、受託者は会社ですので法人格はあります。外部との権利・義務関係は全て受託者に帰属することになります。

 
 

責任の限定

 
 

JVの債務についてはJV会社が責任を負い、株主有限責任の原則により、JV当事者(JV会社の株主)はJV会社の債務について責任を負いません。

 
 

JV当事者はJVに関する債務について無制限に責任を負い、JV事業に関する債務の債権者から直接に請求を受けることになります。

 
 

JVに関する債務については受託者が責任を負い、外部からの請求に対しては受託者が矢面に立つことになります。信託契約を適切に作成することによって、JV当事者(受益者)は信託財産の限度で責任を負うようにすることができます(これはIncorporated JVで株主がJV会社に対する出資の限度で責任を負う株主有限責任と同じです)。

 
 

JVの持分割合

 
 

JV当事者のJVに対する持分割合は、JV当事者が保有するJV会社の株式数によって表されます。

 
 

JV契約の中でJV当事者の持分割合を定め、その持分割合に応じてJV当事者はJVの資産及び権利・義務を有することになります。

JVの資産は持分割合に応じたJV当事者間での共有となり、JVの負債はJV当事者が持分割合に応じて負担します。

 
 

JV当事者のJVに対する持分割合は、信託(Unit Trustと呼ばれます)に対する受益権の持分(Unit)の割合によって表されます。

 
 

JVのガバナンス

 
 

JVのガバナンスは、会社法、定款及び株主間契約によって規律され、株主総会・取締役会といったガバナンスの組織及び権利・義務関係は明確に規定されることになります(例えば、会社法において、会社の一定の事項について株主総会決議事項であると定めていたり、株主には会社に対する一定の情報請求権が認められていたりするため、下記のUnincorporated JVほどには株主間契約に詳細にガバナンスの組織及び権利・義務関係について規律する必要性は低いともいえます)。

 
 

JVのガバナンスの組織及び権利・義務関係は全てJV契約の内容は詳細に定める必要があります(例えば、JVの意思決定をする運営委員会をどのように構成するか、JVのどういった事項をJV当事者(運営委員会)の全会一致決議事項とするのか等について、JV契約で詳細に定めなければなりません)。

 
 

JVのガバナンスは、信託法、受託者の定款、信託契約及び受益者間契約(Unit-Holders Agreement)等によって規律されることになります。受託者のガバナンスと信託のガバナンスの2つに分かれることになりますが、信託のガバナンスについてはUnincorporated JVの場合のように特に詳細に信託契約及び受益者間契約で定める必要があります。

 
 

譲渡可能性

 
 

JV持分の譲渡はJV会社の株式譲渡によって行われます。通常は、株主間契約においてJV会社の株式譲渡については、他のJV当事者の同意が必要とされていたり、他のJV当事者に先買権が与えられていたりします。

 
 

JV持分を譲渡する場合、JV当事者の資産及び契約関係(契約上の地位)を譲渡することになるため、資産譲渡と同じく煩雑であり、(JV契約に別段の定めが無い限り)他のJV当事者の同意が必要になります。

 
 

JV持分の譲渡は、受託者の株式譲渡及び信託持分(Unit)の譲渡によって行われます。通常は、受託者の定款及び/又は受益者間契約等において、これらの譲渡について他のJV当事者の同意が必要とされていたり、他のJV当事者に先買権が与えられていたりします。

 
 

配当方法

 
 

JV事業の利益はJV会社の株主(JV当事者)に対する配当という形で行われます。配当を行うためには、会社に配当可能利益があること、株主総会決議を得ていること等の会社法上の要件を満たす必要があります。

 
 

JV事業に関する損益は各JV当事者に直接に帰属することになるため、JVからJV当事者に対する配当はそもそも行われません。

 
 

JV事業の利益は信託の受益者に対する利益分配といった形で行われます。利益分配は信託契約等に従って行われる必要がありますが、会社と異なり会社法上の要件は適用されないため、配当可能利益がない場合でも利益分配を行うことができます。

 

 

以上、色々と書きましたが、法務の観点から一番重要なのはJVの債務に関する責任が有限であるか否かであるといえます。Unincorporated JVですと無限責任を負うことになるため、この点はUnincorporated JVの大きな欠点となります。ただ、Unincorporated JVには、この無限責任を負うという欠点を上回る税務上の大きなメリットがあるため、Unincorporated JVはオーストラリアのJVで広く用いられています。

 

次回は税務上の観点からJVの形態を考察します。

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