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2015年8月30日 (日)

オーストラリアの相続法-日本法との相違点

日本人の方でオーストラリアに資産を残している方が亡くなった場合の取扱いについて質問を受けることがよくあります。その際には、日本の法律とオーストラリアの法律の両方が問題となることが多くあります。以下に、日本とオーストラリアの相続に関する法律で異なる点を以下に記載します。

1.相続分割主義

オーストラリアの相続に関する国際私法では、いわゆる相続分割主義を採っており、相続財産のうち不動産(Immovables)については当該不動産が存在する土地の法律に従って相続関係を判断し、相続財産のうち動産(Movables)については被相続人の死亡時の居住地(Domicile)の法律に従って相続関係を判断するものとされています。銀行預金や投資信託は動産(Movable)であり、預金先の銀行(債務者)や受託者の所在地が財産の所在地となります。

このため、たとえば、オーストラリア在住の日本人の方が亡くなり、オーストラリアで相続手続が行われる場合、オーストラリアの国際私法に従って、相続財産のうち日本にある不動産については日本の法律が適用されて相続人の範囲及び相続分が判断され、オーストラリアにある不動産についてはオーストラリアに法律が適用されて相続人の範囲及び相続分が判断されることになります。

2.Joint Tenancyの共有財産の扱い

被相続人が有していた共有財産のうちJoint Tenancyの形態で共有している財産については、相続財産に含まれないという点にも注意が必要です(Joint Tenancyの説明については「財産法(1)-共有」を参照)。オーストラリアでは、夫婦で所有している不動産等については、Joint Tenancyの共有形態となっているものが多く、このような場合において、夫が亡くなったときは、Right of Survivorshipにより、これらのJoint Tenancyの共有形態となっている財産は死亡と同時に自動的に妻に帰属することになり、相続財産には含まれず、相続の対象とはなりません。

3.遺留分減殺請求権は存在しない

日本と異なり、オーストラリアには、法定相続人に対して相続財産の一定割合を必ず相続できる権利を与える遺留分減殺請求権という制度は存在しません。したがって、被相続人が遺言で相続財産を処分した場合、法定相続人による遺留分減殺請求権によって当該処分が覆されることはありません。

但し、オーストラリアでは、Family Provisionという制度があり、配偶者、子供といった被相続人の近親者で、その生活が被相続人に経済的に依存していた者等は、裁判所に対して相続財産の一部を自身に分配するように請求することができます(なお、相続に関する法律は州法であり、Family Provisionに関する要件も州毎に異なっています)。このFamily Provisionは、日本の遺留分減殺請求権にように法律上相続財産の一定の割合が必ず分け与えられるというものではなく、分配額は裁判所が案件の具体的な事情を考慮して裁量で定めることになります。

4.相続財産の帰属

日本では被相続人が死亡した時点において、相続財産は直接に相続人に帰属することになります。他方、オーストラリアでは、被相続人が死亡した時点では、相続財産は被相続人に帰属したままであり、「遺言執行者(Executor)」又は「遺産管財人(Administrator)」が被相続人に代わって相続財産の管理・処分・分配を行います。遺言執行者は遺書で定められますが、遺書が存在しない場合、又は遺書で遺言執行者が定められていない場合には、被相続人の近親者等が裁判所に申請して遺産管財人に任命されます。この遺言執行者又は遺産管財人が遺書又は法律に従って相続人に相続財産を分配した時点で、相続財産は相続人に帰属することになります。

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