契約締結権限の確認方法
日本では、契約書上にA氏の実印の印影が認められる場合、契約書への捺印がA氏の意思に基づくものと事実上推定され(最高裁判所昭和39年5月12日判決)、さらに契約書はA氏の意思に基づいて作成されたと法律上推定されます(民事訴訟法228条4項)。いわゆる、二段階の推定と呼ばれるものです。このため、会社が契約書の署名者となる場合には、当該会社の実印である代表者印を捺印させ、当該会社の代表者事項証明書と印鑑証明書を提出させて契約書上の印影と照合させることにより、当該会社の実印が捺印されており、上記の二段階の推定が適用されることを確認するのが通常です。
オーストラリアでは、オーストラリアで設立された会社について、その会社の取締役2名(又は取締役1名と秘書役1名の合計2名)が契約書に署名した場合は、当該会社は有効な権限に基づいて当該契約書を締結したものと推定され、契約相手方が契約書締結時点において有効な権限がないことについて知っていたり、又は疑っていたという事情が無い限り、当該会社はこの推定を覆すことはできないとされています(オーストラリア会社法第128条、第129条第5項及び第127条第1項)。したがって、オーストラリアの会社による契約締結が有効に行なわれたか否かを確認する場合、契約相手はASICから当該会社の登記情報を取得して、当該会社の取締役及び秘書役が誰であるかを確認し、登記されている取締役2名(又は取締役1名と秘書役1名の合計2名)が契約書に署名をしていれば、上記の会社法に基づく推定によって契約相手は保護されることになります。本当に取締役又は秘書役の本人が署名したのかを確認するために、さらに署名した取締役又は秘書役のパスポートや運転免許証(本人の署名が含まれている)の写しを提出させることもあります。
なお、取締役が1名のみで、当該取締役が秘書役も兼ねている会社の場合、当該取締役兼秘書役1名の署名をもって上記の会社法上の推定が適用されます。取締役が1名のみだが、当該取締役が秘書役を兼ねていない会社(秘書役が設置されていない場合を含む)の場合、当該取締役が署名をしたとしても上記の会社法上の推定は適用されませんので、注意が必要です。
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