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2016年4月

2016年4月25日 (月)

オーストラリアの不動産売買手続

オーストラリアにおける不動産の売買手続は、おおよそ以下のとおりになります。

(1)不動産を探してオファーを出す

Realestate.com.auDomainといった不動産検索ウェブサイトで売却に出されている不動産をチェックし、購入したい不動産を決めます。買主は、同ウェブサイトに記載されている不動産エージェントに連絡し、物件の内見を行なうなどした後、価格を決めて売主に対してオファーを出します。オファーは口頭で不動産エージェントに伝えることで構いません。オファー価格を決める際には、RP Data Core LogicResidexといった不動産データ会社が提供しているValuation Report(鑑定レポート)が参考になります。このレポートは1物件あたり数十ドル程度です。On the HouseAustralian Property Monitorsは無料の鑑定レポートを提供していますが、精度は上記の有料のものに比べると劣るように思います。

不動産エージェントは、売主側の代理人であり、売主の利益のために行動しているので、買主側としては注意が必要です。不動産エージェントは、売主に不利な情報(たとえば、物件が洪水の被害を受けやすい地域に入っている、物件にアスベストが使用されている等)は積極的には開示しないため、買主側は自ら調査を行う必要があります。オーストラリアでは両手仲介は禁止されており、売主及び買主双方に中立の不動産エージェントというのはありえません。但し、買主側で別途買主側の利益を代表する不動産エージェントを雇うことは可能です。

オーストラリア国外に居住する外国人がオーストラリアの不動産を購入する場合、不動産エージェントが不動産の仲介を行なうことが多いですが、この不動産エージェントが売主側の代理人であるのか、それとも買主側の代理人であるのかを確認しておくことが重要です。

(2)売買契約書を締結する

売主がオファーを受け入れる場合、売買契約書を締結することになります。不動産エージェントは、エージェント側の弁護士が作成した売買契約書を買主に出してきますので、買主はこれをレビューして問題が無いか確認する必要があります。通常は、買主はこの時点から弁護士を雇い、弁護士に売買契約書をレビューしてもらいます。売買契約書の内容に問題が無ければ、売主及び買主の双方が売買契約書に署名して締結します。売買契約書締結時に買主は売買金額の510%の頭金を支払うのが一般的です。この頭金は不動産エージェント又は売主側の弁護士が受領して保管し、決済時に売買代金に充当されるのが通常です。頭金は小切手の交付又は銀行振込の方法で支払うのが一般的です。

なお、売買契約書は、業界団体等によって定められている標準書式を利用して作成されるのが通常です(たとえば、クイーンズランド州では、Real Estate Institute of QueenslandQueensland Law Societyが標準書式を定めています)。ただ、標準書式の内容について追加・変更する特別条件(Special Condition)が規定されていることもあるため、しっかりとレビューをする必要があります。

(3)売買契約の締結から決済条件の完了まで

売買契約書では、「物件調査の結果に買主が満足すること」及び「買主が決済に必要な融資を確保できること」の2点が売買決済の条件となっていることが一般的に多いといえます。これらの決済条件は売買契約書締結日から23週間の期限内に満たすように規定されるのが通常です。すなわち、これらの条件が売買契約書締結日から期限内に満たされない場合、売主又は買主は売買契約書を解除することができます。このため、買主はこの期限内に専門の建築業者に委託して物件の構造等の建物の情況を確認させ、弁護士に委託して物件の法律・権利関係に問題がないかを確認させ、また、害虫駆除業者に委託してシロアリ等の問題がないかを確認させます。これらの確認によって問題点が見つかった場合、買主に伝えて、問題点を決済までに直させたり、値引きをするように要求をすることができます。

マンション等の区分所有建物の物件を建物完成前に購入する場合(オフ・ザ・プランで購入する場合)、物件が完成して購入予定の区分所有部分の登記が完了することが決済条件として規定されるのが通常です。この決済条件は、売買契約書から12年といった長期の期限が定められます。

売買契約書締結日から物件の危険負担は買主側に移転しますので、買主は売買契約書締結日から物件について保険を掛けるの一般的です。

(4)決済の実行

売買契約書の条件が満たされた後、決済の準備が始まります。売買契約書では、決済日は売買契約書締結日から30日~60日後とするのが一般的です。

買主側の弁護士は、所有権移転登記に必要な書類(Transfer Document)を作成し、買主及び売主がこれに署名します。また、買主側の弁護士は、印紙税(Stamp Duty / Transfer Duty)(物件価格によって異なりますが、約36%程度)を税務署に支払ってTransfer Documentに印紙税支払済のスタンプを押してもらいます。このスタンプ済のTransfer Documentが所有権移転登記に必要となるため、印紙税を支払わなければ所有権移転登記を行うことはできないようになっています。決済後直ちに所有権移転登記を行えるように、印紙税は決済前に支払っておくのが通常です。また、買主が銀行からローンを受けて、購入物件に銀行のために担保権を設定する場合には、銀行の弁護士が作成する担保権設定契約書に署名します。

決済は、売主の弁護士、買主の弁護士、売主の銀行の弁護士(売主が物件に担保を設定している場合)、買主の銀行の弁護士(買主が物件に担保を設定する場合)が集まって行ないます(買主及び売主は出席しないのが通常です)。買主の弁護士は、売主の弁護士に売買代金(頭金の金額を除く)の小切手を手渡し、売主の弁護士から署名済・スタンプ済のTransfer Document(及び所有権証書(もし発行されていれば))を受領し、売主の銀行の弁護士から担保権解除書類を受領します。買主側の銀行の弁護士は、買主の弁護士から署名済・スタンプ済のTransfer Document、署名済の抵当権解除書類及び署名済の抵当権設定契約書を受領し、売主の銀行の既存の抵当権解除の登記、売主から買主への所有権移転の登記、及び買主の銀行のための抵当権設定の登記を行います。これらの登記手続が完了し、買主が新たな所有者として登記されるまで1ヶ月程度かかります。

(5)購入に要する費用

不動産購入に要する費用ですが、印紙税(Stamp Duty / Transfer Duty)が最も大きく、物件の売買価格の36%程度かかります(印紙税の具体的なパーセンテージについては、ニューサウスウェールズ州ヴィクトリア州クイーンズランド州の税務当局のウェブサイトを参照ください)。平均的な居住用物件であれば、弁護士費用は2,000ドル程度、建築業者・害虫駆除業者の合計費用は1,000ドル程度といったところです。また、登記手続に数百ドル程度の手数料がかかります。不動産エージェントは売主側の代理人であるため、売主から売買代金の2%程度の報酬を受領します。買主は売主側の不動産エージェントに対して報酬を支払う必要はありません。但し、買主が買主側の不動産エージェントを雇った場合、買主側の不動産エージェントに対して報酬を支払う必要が生じます。

(6)外国人による購入

オーストラリアの永住権を持っていない外国人がオーストラリアの居住用不動産を購入する場合、外国投資審議委員会(Foreign Investment Review BoardFIRB)の許可を得る必要があり、FIRBの実務運用上、新築の物件を購入する場合(又は更地を購入して建物を新築する場合)でなければこの許可を取得することはできなくなっています。外国からの投資によって居住用不動産の価格が高騰してオーストラリア人の手の届かないような価格にならないように、FIRBは、原則として、外国人が居住用不動産を購入することは認めていませんが、例外的に、新築の居住用不動産の場合にはオーストラリアの居住用不動産の供給に資するため、許可を与えています。なお、新築であれば、マンションに限られず、一戸建てでも許可を取得することは可能です。

他方、外国人(日本人又は日本の会社)が商業用不動産(オフィス、商業施設等)を購入する場合、その価値又は売買価格が1,094万豪ドル以下であればFIRBの許可は必要となりません。

FIRBの許可が必要となる場合、FIRBの許可を得ることを売買契約書において決済の条件として定めておくことが必要になります。

2016年4月11日 (月)

オーストラリアの個人情報保護法

オーストラリアで個人情報を収集する会社には、オーストラリアの個人情報保護法(Privacy Act 1988 (Cth)1988年連邦プライバシー法)が適用される可能性があります。

(1)個人情報保護法の適用

まず、個人情報保護法の保護の対象となる「個人情報(personal information)」とは、「特定された個人、又は合理的に特定できる個人に関する情報又は意見」をいい、当該情報又は意見が真実であるか否か、及び当該情報又は意見がどのような形式で記録されているかを問わない、とされています。

例えば、個人の身長、体重、年齢、性別等に関する情報を集めたとしても、個人の名前が記録されておらず、個人が特定できないものとなっているのであれば、当該情報は個人情報には該当しません。逆に、個人のEメールアドレスのみを集めた場合であっても、当該Eメールアドレスは個人の名前と所属組織の名前から構成されており、当該個人が特定できてしまう場合(例:「msuzuki@claytonutz.com」→「Clayton Utzに勤務する鈴木」と特定できてしまう)には、当該Eメールアドレスは個人情報に該当します。

オーストラリアの個人情報保護法が適用される会社は、「オーストラリアで設立された会社であって、一会計年度における売上金額が3百万豪ドル以上の会社」、又は「オーストラリア国外で設立された会社であっても、オーストラリアで事業を営んでおり、オーストラリア在住の個人から個人情報を収集しており、かつ一会計年度における売上金額が3百万豪ドル以上の会社」です。

上記の「オーストラリアで事業を営んでいるか否か」という点は、オーストラリアにおいて事業拠点を有している場合や物理的な事業活動を行っている場合のみならず、オーストラリアの顧客をターゲットとするウェブサイトの運営等のオンライン上の活動を行なっている場合も含まれます。

例えば、日本で設立された会社であって、オーストラリアにおいて事業拠点を有しておらず、物理的な事業活動を行なっていなくても、英語でオーストラリア人をターゲットとするウェブサイト(オーストラリアがターゲット対象国の一つであれば構わない)を作成し、オーストラリア人に個人情報を入力させるようになっていれば(商品を販売するウェブサイトで、当該商品の発送先としてオーストラリア人顧客にその氏名・住所等を入力させるなど)、当該会社にはオーストラリアの個人情報保護法が適用されると考えられます。

(2)個人情報保護法の規制内容

個人情報保護法が適用される会社は、Australian Privacy PrinciplesAPP)を遵守しなければなりません。このAPP13個の原則からなりますが、その内容はオーストラリアの個人情報保護法の規制当局であるOffice of Australian Information CommissionerOAIC)のウェブサイトで確認することができます。APPでは、個人情報の収集の方法・目的、採るべき保護措置、第三者への開示(特に国外への送付)の可否・方法、本人からのアクセス要求へ対応等について定めています。とりわけ、APPの第一原則では、個人情報保護法が適用される会社は、APPの内容に適合したプライバシー・ポリシーを作成し、ウェブサイト等で閲覧できるようにしなければならないとされています。

(3)違反した場合の罰則

APPの不遵守が重大である場合、又は繰り返し行われる場合には、OAICは裁判所に対して違反を提訴し、APPに違反した会社に対して最大1.8百万ドルの罰金を支払うように請求をすることができます。但し、APP20143月に導入された新しい制度であり、APPの違反によって罰金が課された案件は現時点ではまだありません。したがって、どの程度の違反に対してどの程度の罰金が課されるのかといった実際の運用については、まだ明確になっていません。

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