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2016年6月 2日 (木)

遺書が無い場合における相続人の範囲と法定相続分

オーストラリアにおいて、遺言書を残さず亡くなった被相続人の相続財産がどのように相続されるか(相続人の範囲及び法定相続分)については、州法が管轄する分野であり、州毎に異なります。以下では代表的な東部三州(New South Wales州、Victoria州及びQueensland州)の法律の定める内容について説明します。

1.NSW州の法律が適用される場合(Succession Act 2006 (NSW)

NSW州の法律が適用される場合、遺言書を残さず亡くなった被相続人の相続財産は、以下のように相続されます。

· 被相続人に配偶者(内縁関係にある者を含む - 以下同じ)が1名いて、かつ子孫がいない場合又は子孫がいるが当該子孫は全て当該配偶者の子孫である場合には、当該配偶者は被相続人の相続財産の全てを相続します。

· 被相続人に配偶者が1名がいて、子孫もいるが当該子孫は当該配偶者の子孫ではない場合には、当該配偶者は、①「被相続人の私物(personal effects)」、②「法定遺産(statutory legacy)」及び③「①と②を控除して残った遺産の2分の1」を相続します。

②の法定遺産(R)は、消費者物価指数(CPI)によって変動し、以下の式によって計算されます。

R = A × C ÷ D


"A" = $350,000.

"C" =
被相続人の死亡日の直前に発表された四半期における消費者物価指数(Consumer Price Index

"D" =2005
12月期(9月から12月の3ヶ月間)における消費者物価指数(Consumer Price Index

· 被相続人に配偶者が2名以上いて、かつ子孫がいない場合又は子孫もいるが当該子孫は全てこれらの配偶者の子孫である場合には、これらの配偶者は被相続人の相続財産の全てを相続します。これらの配偶者間の相続財産は、相続財産分配に関する合意又は命令がある場合には、当該合意又は命令に従って分配され、そのような合意又は命令がない場合には、均等に相続します。

· 被相続人に配偶者が2名以上いて、子孫もいるが当該子孫は当該配偶者の子孫ではない場合には、これらの配偶者は、①「被相続人の私物(personal effects)」、②「法定遺産(statutory legacy)(計算式は上記参照)」及び③「①と②を控除して残った相続財産の2分の1」を相続します。これらの配偶者間の相続財産は、相続財産分配に関する合意又は命令がある場合には、当該合意又は命令に従って分配され、そのような合意又は命令がない場合には、均等に相続します。

· 被相続人に配偶者がおらず、子孫がいる場合、被相続人の子供が相続財産の全てを相続します。子供が亡くなっている場合、当該子供の相続分は当該子供の子孫が相続します。

· 被相続人に配偶者がいて、子孫もいるが当該子孫は当該配偶者の子孫ではない場合には、被相続人の子供は当該配偶者の相続分を除いた相続財産を相続します。子供が複数いる場合には、子供は均等に相続します。子供が亡くなっている場合、当該子供の相続分は当該子供の子孫が相続します。

· 被相続人に配偶者も子孫もいない場合、被相続人の両親が相続財産を均等に相続します。片親しか残っていない場合、当該親が全て相続します。

· 被相続人に配偶者も子孫も親もいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続財産を均等に相続します。被相続人である兄弟姉妹が亡くなっている場合、当該兄弟姉妹の相続分は当該兄弟姉妹の子孫が相続します。

· 被相続人に配偶者も子孫も親も兄弟姉妹(及びその子孫)もいない場合、被相続人の祖父母が相続財産を均等に相続します。

· 被相続人に配偶者も子孫も親も兄弟姉妹(及びその子孫)も祖父母もいない場合、被相続人の親の兄弟姉妹(おじ・おば)が相続財産を均等に相続します。被相続人であるおじ・おばが亡くなっている場合、当該おじ・おばの相続分は当該おじ・おばの子供(一世代限りの代襲)が相続します。

 

2.VIC州の法律が適用される場合(Administration and Probate Act 1958 (VIC)

VIC州の法律が適用される場合、遺言書を残さず亡くなった被相続人の相続財産は、以下のように相続されます。

· 被相続人に配偶者がいて、かつ子孫がいない場合、当該配偶者が相続財産の全てを相続します。

· 被相続人に配偶者がいて、子孫がいる場合、当該配偶者は被相続人の私物(personal chattels)を相続し、さらに、①相続財産が10万ドル以下である場合には、相続財産の全てを相続し、②相続財産が10万ドル超である場合には、10万ドル及び残りの相続財産の3分の1を相続します。

· 被相続人に配偶者が2名以上いる場合、被相続人と内縁関係にある者が被相続人の死の直前にどれだけ長く被相続人の配偶者として暮らしていたかによって相続分が変わります。被相続人と内縁関係にある者が被相続人の配偶者として暮らしていた期間が4年未満である場合には当該内縁関係者は相続財産の3分の1を相続し、残りの3分の2を正式に登録された配偶者が相続します。内縁関係者が被相続人の配偶者として暮らしてきた期間が4年以上5年未満の場合には、当該内縁関係者と正式登録配偶者はそれぞれ相続財産の2分の1ずつを相続し、5年以上6年未満の場合には内縁関係者が3分の1、正式登録配偶者は3分の2を相続し、6年以上の場合には内縁関係者が相続財産の全部を相続します。

· 上記の相続分の分配の結果、残った相続財産については、原則として被相続人の子供達の間で均等に相続されます。子供が亡くなっている場合、当該子供の相続分は当該子供の子孫が相続します。

· 被相続人に配偶者も子孫もいない場合、被相続人の両親が相続財産を均等に相続します。片親しか残っていない場合、当該親が全て相続します。

· 被相続人に配偶者も子孫も親もいない場合、被相続人の直近の親族(兄弟姉妹又は祖父母)が均等に相続しますが、兄弟姉妹(又はその子供(一世代限りの代襲))がいる場合には兄弟姉妹(又はその子供(一世代限りの代襲))が祖父母に優先します。

 

3.QLD州の法律が適用される場合(Succession Act 1981 (QLD)

QLD州の法律が適用される場合、遺言書を残さず亡くなった被相続人の相続財産は、以下のように相続されます。

· 被相続人に配偶者がいて、かつ子孫がいない場合、当該配偶者が相続財産の全てを相続します。

· 被相続人に配偶者が2名以上いて、かつ子孫がいない場合、相続財産分配に関する合意又は命令があれば、当該合意又は命令に従って配偶者間で相続財産は分配されます。そのような合意又は命令がない場合には、配偶者間で相続財産は均等に分配されます。

· 被相続人に配偶者がいて、かつ子孫がいる場合、当該配偶者は相続財産のうち15万ドルと家庭用品(household chattel)を相続し、さらに、①被相続人の子供が1名の場合には、残りの相続財産の2分の1を相続し、②被相続人の子供が2名以上の場合には、残りの相続財産の3分の1を相続します。

· 被相続人に配偶者が2名以上いて、かつ子孫がいる場合、これらの配偶者は相続財産のうち15万ドルと家庭用品(household chattel)を相続し、さらに、①被相続人の子供が1名の場合には、残りの相続財産の2分の1を相続し、②被相続人の子供が2名以上の場合には、残りの相続財産の3分の1を相続します。これらの配偶者が相続する相続財産は、相続財産分配に関する合意又は命令があれば、当該合意又は命令に従ってこれらの配偶者間で分配されます。そのような合意又は命令がない場合には、これらの配偶者間で相続財産は均等に分配されます。

· 上記の分配の結果残った相続財産については、被相続人に子供がいる場合には子供が均等に相続します。子供が亡くなっている場合、当該子供の相続分は当該子供の子孫が相続します。

· 被相続人に配偶者がおらず、子供がいる場合には、子供が相続財産の全部を均等に相続します。子供が亡くなっている場合、当該子供の相続分は当該子供の子孫が相続します。

· 被相続人に配偶者がおらず、子孫もいない場合には、両親が均等に相続します。片親しか残っていない場合、当該親が全て相続します。

· 被相続人に配偶者も子孫も親もいない場合には、兄弟姉妹(又はその子供(一世代限りの代襲))、祖父母、おじ・おば(又はその子供(一世代限りの代襲))の順番で相続します。 

 

「配偶者」→「子供」→「親」→「兄弟姉妹」の順番で相続権を有している点は、基本的にオーストラリア法と日本法は同じであるといえます。オーストラリア法が日本法と大きく異なる点として、内縁の配偶者も結婚登録等されている配偶者と同じレベルで相続権を与えられている点が挙げられます。

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