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2016年10月 3日 (月)

企業結合の届出

企業結合(株式譲渡や事業譲渡などによる企業と企業の事業統合)によって一定の分野における競争が実質的に制限されることになる場合、独占禁止法によって企業結合が禁止又は制限されるという制度は世界中に存在します。

届出義務の有無

豪州では、重要な市場における競争を実質的に制限する(substantially lessening competition)効果を有する、又はそのおそれのある企業結合は、豪州の独占禁止法(Competition and Consumer Act 2010 (Cth)50等)によって禁止されています。

独占禁止法に基づく事前の届出義務というものは存在せず、企業は当局(Australian Competition and Consumer Commission)(ACCC)の許可を受けることなく企業結合を実行することができます。但し、実行された企業結合が重要な市場における競争を実質的に制限する効果を有する、又はそのおそれがあるとACCCが考えた場合、ACCCによる申請によって、連邦裁判所から取引差止命令や反対取引命令(企業結合の解消を命じる裁判所命令)等を受ける可能性があります。したがって、事前の届出義務は存在しないものの、重要な市場における競争を実質的に制限する効果を有する、又はそのおそれがある企業結合については、企業結合の当事者は事前にACCCに対して確認を求めるのが通常です。

日本や中国では企業結合の当事者の売上金額が一定の金額を超えている等の形式的な要件を満たせば政府当局に対する事前の届出等が義務づけられるのと比較して、豪州では、届出の義務は存在せず、事前に政府当局に確認を求めるか否かは企業結合の当事者の判断に委ねられています。また、その判断の際にも売上金額等の形式的な要件ではなく、競争が実質的に制限されるか否かという実質的な要件を検討することになります。

届出の制度

事前にACCCに対して確認を求める方法として、主として、公式審査手続(Formal Merger Clearance非公式審査手続(Informal Merger Review2種類の方法があります。

公式審査手続の場合、一定の申請費用(201610月現在において25,000豪ドル)がかかりますが、ACCCが問題ないという見解を示せば、企業結合の当事者は企業結合に関して事後的に独占禁止法上の法的責任を問われなくなります。他方、非公式審査手続の場合、申請費用はかからず比較的に簡易な手続でACCCの見解を得ることができますが、このACCCの見解はあくまで非公式なものにすぎず、企業結合に関して事後的に独占禁止法上の法的責任を問われなくなるという法的効果は得られません。

公式審査手続の詳細については、こちらのACCCのガイドラインを、非公式審査手続の詳細については、こちらのACCCのガイドラインをご参照ください。

公式審査手続及び非公式審査手続のいずれについても、手続に要する時間は個別の案件毎に異なりますが、一般には23ヶ月程度はかかるとされています。 

※  なお、ACCCによる公式審査手続及び非公式審査手続の他に、Australian Competition Tribunal(オーストラリア競争審査機関)(ACT)に対して企業結合の許可(merger authorisation)を求めるという手続も存在しますが、この手続はあまり利用されておらず、ACCCの公式審査手続と役割が重複しているという批判を受けています。2015331日公表のHarper Reportでは、現在のようにACCCの公式審査手続とACTの許可申請手続が並列するのではなく、企業結合の審査に関して、ACCCが第一次審査機関、ACTが第二次審査機関(ACCCの決定に対する不服申立先)としての役割を与えられるべきことが提案されています。2014年にAGL EnergyMacquarie Generationを買収した際、及び2016年にSea SwiftToll Marineの事業の一部を買収した際において、ACTの許可申請手続が利用されていますが、これはACCCがこれらの企業結合に対して否定的な見解を示していたため、企業結合の当事者がACTの許可申請手続を利用したというものでした。

届出を行なうか否かの判断

競争が実質的に制限されるか否かという判断を行なう際には、以下のような要素が考慮されます(Competition and Consumer Act 2010 (Cth)50条第3項)。

・ 市場における実際の及び潜在的な輸入品の競争の程度

・ 市場への参入障壁の高さ

・ 市場における集中の程度

・ 市場における対抗勢力の程度

・  買収者が価格又は利鞘を著しく及び実質的に増加することができるようになる可能性

・ 市場において代替品・サービスが利用できる、又は利用できるようになる可能性の程度

・ 市場のダイナミズムの特徴(成長、イノベーション、製品の差別化を含む)

・  買収が市場から強力かつ効果的な競合業者を排除する可能性

・  市場における垂直的統合の性質及び程度

一般的な目安として、事業結合後の豪州の関連市場シェアが20%を越えるような場合には、競争が実質的に制限される可能性があると判断されるリスクが高いとして、事前の届出を行う場合が多いといえます。この20%という数値はあくまでも目安であり、関連事業の競合他社の数が少ない、買収者の企業規模や資本力により市場の競争情況に大きな影響を及ぼす可能性があるといった場合には、市場シェアが20%に満たない場合であっても競争が実質的に制限される可能性があると判断されるリスクはあります。

届出の要否を検討する際には、まずは「オーストラリアで販売又は提供されている製品又はサービスの内容」、「市場シェア」、「市場の規模」、「業豪事業者の名前及び市場シェア」といった情報を検討することになります。これらの基礎的な情報を検討した上で、競争が実質的に制限される可能性が高そうであれば、更に詳細な情報(代替製品・サービスの有無等)を検討していくことになります。


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