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2017年2月17日 (金)

第三者のためにする契約(Privity Doctrineの例外)

豪州の契約法では、「契約の当事者ではない者は当該契約の履行を強制することはできないし、当該契約に基づく義務をうことはできない」という原則があります(Privity Doctrineと呼ばれます)。このPrivity Doctrineは、豪州の契約法における根本的な原則となっています。

日本法(民法)でもこの原則は同様に当てはまりますが、民法第537条においてこの原則の例外を定めており、契約の当事者が当該契約において第三者(当該契約の当事者ではない者)に対して利益を与え、当該第三者が当該当事者に対してその利益を享受する意思表示を行った場合には、当該第三者が当該当事者に対して当該利益の給付を強制できると定めています。

豪州の契約法は、主に過去に裁判所が出した判決(判例)の集積から構成される判例法(コモンロー)ですが、判例法ではPrivity Doctrineが維持されており、民法第537条のような例外は認められていません。豪州法の源流となっているイギリス法では、Contracts (Rights of Third Parties) Act 1999を制定し、このPrivity Doctrineの例外を認め、契約書において第三者に権利を与えることが可能となっています。豪州の中でもクイーンズランド州、西オーストラリア州、北部準州では、州・準州が定める制定法によって、イギリスと同様にこのPrivity Doctrineの例外を認めています(Property Law Act 1974 (QLD)55条、Property Law Act 1969 (WA)11条、Law of Property Act (NT)56条)。他方、ニューサウスウェールズ州やヴィクトリア州では、同じような州法が存在せず、Privity Doctrineの例外が認められていません(したがって、契約書において第三者に権利を与えることができません)。

Privity Doctrineの例外を認める制定法がないニューサウスウェールズ州やヴィクトリア州の事業に関する契約書において第三者に権利を与えたい場合には、以下の2つの方法が考えられます。

一つ目の方法は、契約書の準拠法をクイーンズランド州法や西オーストラリア州法として定め、契約書において第三者に権利を与えることを可能とするProperty Law Act 1974 (QLD)55条、Property Law Act 1969 (WA)11条の適用を受けるようにすることです。具体的な契約書の文言としては、「This agreement is governed by the law of Queensland. It is intended that, pursuant to section 55 of the Property Law Act 1974 (QLD), this agreement be enforceable by [Third Party] as contemplated by clause ##.」といったものが考えられます。

二つ目の方法は、契約書をDeed(捺印証書)の形式で締結することです。以前にこのブログの「Deed(捺印証書)とは何か」という記事で説明しましたが、Deedの形式で契約書を締結すれば、契約の当事者ではない第三者に対して権利を与えることができます。具体的な契約書の文言としては、「This deed takes effect as a deed between the parties and a deed poll given by [Promisor] in favour of [Third Party], and is intended that this deed be enforceable by [Third Party] as contemplated by clause ##.」といったものが考えられます。

上記のとおり、オーストラリア法では、日本法と異なり、契約書において第三者に対して権利を与えることが当然に認められるわけではなく、上記の2つの方法のいずれかを採る必要があるため、注意が必要です。上記の方法を採らずに契約書において第三者に対して与えたはずの権利が無効であったという事態が生じることは避けなければなりません。 

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