« 論文:『豪州の不動産法制度と日本からの投資』(不動産証券化ジャーナル第39号) | トップページ | オーストラリアの金融サービス業に関する規制 »

2018年2月 5日 (月)

オーストラリアの有価証券の発行開示規制

1.業規制と開示規制

オーストラリアにおいて、株式や社債等の有価証券(Securities)の募集・売出しを行う場合、投資家保護の観点から、日本と同じように「許認可」及び「開示」に関する規制が課されます。

日本では、前者は金融商品取引業の許可であり、後者は有価証券届出書の届出、目論見書の交付といったものになります。

オーストラリアでは、前者はAustralian Financial Services LicenceCorporations ActChapter 7に規定)、後者はProspectus等の開示書類の届出・交付(Corporations ActChapter 6Dに規定)となります。

今回は、後者の開示規制について、説明します。

2.開示規制の内容

Corporations Act(オーストラリア会社法)の706条は、以下に説明する一定の免除事由に該当しない限り、新規発行の有価証券の募集には開示書類(Disclosure Document - 原則としてProspectus)が必要となると定めています。

また、707条は、発行済の有価証券の売出しにも開示書類が必要になる場合があることを定めています。この売出しに関する規制は、706条の募集にかかる開示規制の潜脱を防ぐために定められたものであり、例えば、「発行済株式の売出しを行おうとする者が発行体をコントロールしている場合」や「有価証券が転売目的で開示書類なしに発行され、当該発行から12ヶ月以内に転売される場合」は707条によって開示書類が必要になります。

なお、「有価証券」(securities)とは、(a)株式、(b)債券(debenture - 9条において特別な定義があるため注意)、(c)上記(a)又は(b)に関する法律上又は衡平法上の権利又は利益、 (d)上記(a)乃至(c)の発行を受けるオプション等をいいます(700条(1)、761A条)。

3.開示の免除事由

708条では、開示書類が必要とならない免除事由が定められています。

日本の会社がオーストラリアの投資家に対して、株式、社債等の有価証券を発行することを検討している場合には、これらの免除事由に該当することを確認し、開示書類が必要にならないようにすることが重要です。

(1) 免除事由① 小規模募集・売出し(708(1)(7)

有価証券の募集・売出しは、以下の3つの要件を満たしている場合には、開示書類が必要となりません。

・ 募集・売出しのオファーがPersonalなものであること

・ 12ヶ月以内20名以下の投資家に対して有価証券が発行・譲渡されたこと(※注:オファー自体は20名超の投資家に対してなされてもよく、オファーを受諾して有価証券の発行・譲渡を受けた投資家の数が20名以下であればよい)

・ 12ヶ月以内になされた出資・譲渡金額が2百万豪ドル以下であること

Personalなオファーとは、オファーに興味があると考えられる者に対してなされ、そのような者だけが受託することができるオファーをいいます。オファーに興味があるか否かは、オファーをする者とされる者の間の過去のやりとり、関係、言動といった要素を考慮して判断されます。

(2) 免除事由② 洗練された投資家(Sophisticated Investors)へのオファー(708(8)

洗練された投資家は、自分で自己の利益を保護することができ、保護の必要性が低いという理由から開示書類は必要とされていません。

投資家が発行・譲渡を受けようとしている有価証券の発行・譲渡金額と既に保有している同一の有価証券の金額との合計金額が50万豪ドル以上である場合には、洗練された投資家とみなされます。

また、直近の2会計年度のそれぞれにおいて、純資産が2.5百万豪ドル以上又は総収入が25万豪ドル以上である者(又はそのような者がコントロールしている会社又は信託)も洗練された投資家とみなされます。ただし、純資産・総収入の金額については、資格ある会計士の証明書の発行を受けて証明する必要があります。証明書はオファーがなされた時点から6ヶ月以内のものである必要があります。

(3) 免除事由③ Australian Financial Services Licence保有者によるオファー(708(10)

発行体による有価証券の募集・売出しのオファーがAustralian Financial Services LicenceAFSL、日本の金融商品取引業の許可に相当)の保有者を通じてなされ、かつ、当該AFSL保有者がオファーを受ける投資家がその過去の有価証券の投資経験に鑑みてオファーのメリット・リスク、有価証券の価値、オファーの情報の正確性等を理解できると合理的に判断する場合には、開示書類は必要となりません。

(4) 免除事由④ その他の免除事由(708(13)(20)

·  発行体のSenior Manager(当該発行体の財務状況に重要な影響を与えることができる地位にある者)、その親戚又はこれらの者によってコントロールされている会社に対するオファー(708(12)

· 配当再投資プラン又はボーナス株式プランに基づく既存株主へのオファー(708(13)

·  対価が0の株式のオファー(708条(15))

·  行使価格が0で対価も0のオプションのオファー(708(16)

·  一定の条件の下で、Deed of Company Arrangement(会社再生計画)に基づいて債権者に発行する株式のオファー(708(17A)

開示規制に関する説明は以上になります。

次回は、業規制、すなわちAustralian Financial Services Licence(Corporations ActのChapter 7に規定)について説明します。

 

« 論文:『豪州の不動産法制度と日本からの投資』(不動産証券化ジャーナル第39号) | トップページ | オーストラリアの金融サービス業に関する規制 »

会社法」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: オーストラリアの有価証券の発行開示規制:

« 論文:『豪州の不動産法制度と日本からの投資』(不動産証券化ジャーナル第39号) | トップページ | オーストラリアの金融サービス業に関する規制 »