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2018年4月22日 (日)

オーストラリアでよく見られる節税スキーム(その2)

前回からの続きで、オーストラリアでよく見られる節税スキームを紹介します。

4.不動産開発における土地所有者と開発主体の分離スキーム

オーストラリアにおいて、不動産の開発、すなわち土地の上に建物を建築したり、大規模な土地を購入して宅地造成したりする場合、土地の所有者は、開発に従事する会社を設立し、開発行為(建築行為・宅地造成行為、開発許認可の取得、開発した不動産の販売等)を委託することが良く見られます。これにより土地を所有する主体と土地を開発する主体が2つに分かれることになります。

土地の所有者が開発行為を行なって、開発した不動産を売却して利益を得た場合、当該利益はキャピタルゲインではなく、営業行為による利益とみなされます。他方、土地の所有者が開発行為を別の開発主体に行なわせ(但し、土地の所有者は開発行為の対価として開発主体に対して開発フィーを支払う)、土地の所有者は開発行為に関与せず、開発した不動産を売却して利益を得た場合、当該利益はキャピタルゲインとみなされます(mere realisation of assetという表現で呼ばれます)。

営業行為による利益とキャピタルゲインのいずれについても所得税が課されることになるのですが、キャピタルゲインについては前回の記事でも触れたように、多くの減免(前回の記事に書いたもの以外にもあります)があり、営業行為による利益とみなされてしまった場合には、この減免を受けることができません。このため不動産の開発では、土地所有主体と土地開発主体を2つに分ける上記の分離スキームが採られることが良く見られます。

5.Managed Investment TrustMIT

オーストラリアのファンド等に投資する海外の投資家のみに認められる税務優遇措置として、Managed Investment TrustMIT)というものがあります。豪州のファンドが一定の要件を満たしてMITに該当する場合、当該ファンドから豪州国外の投資家への配当に課される源泉徴収税(withholding tax)が減額されるという税務上の恩恵を受けることができ、本来であれば30%の源泉徴収税が10%又は15%となります。このMITの制度は、豪州のファンドを海外の投資家にとって魅力的なものとし、豪州のファンド業界の競争力を高めるために導入されています。豪州には外資規制(FIRBの規制)等の海外企業に不利な制度(余計な負担を課す制度)がある中で、このMIT制度は海外企業を国内企業よりも優遇する珍しい制度といえます。

MITはその名の通りTrust(信託)でなければならず、豪州のファンドがMITとみなされるためには、ファンドが信託を利用したスキームであり、かつ以下の要件を全て満たしている必要があります。

a) 信託の受託者が豪州の会社であるか、又は信託の経営・支配が豪州において行われていること

b) 信託が受動的な投資活動(不動産の保有・賃貸や株式・ユニットその他の金融商品の保有等がこれに該当し、不動産の開発行為は含まれない)のみを行っていること

c) 豪州の信託財産に関する投資管理活動の相当な割合(a substantial proportion of the investment management activities)が豪州において行われていること

d) 会社法上のManaged Investment SchemeMIS)に該当すること(MISについてはこちらの記事をご参照ください)

e) 信託がASICに登録されていること

f)  Widely heldの要件を満たすこと - すなわち、基本的に50名以上の投資家によって受益権が保有されていること(但し、ファンド等はその背後にいる投資家の数をカウントすることができます)

g Not closely heldの要件を満たすこと - すなわち、基本的に20名以下の投資家(ファンド等の背後にいる投資家は除く)が75%以上の受益権を有さないこと

hAustralian Financial Services LicenceAFSL - オーストラリア金融サービス業ライセンス)を有している者によって信託が管理・運営されること(AFSLについては以前の記事を参照ください)

MITの制度の詳細については、Australian Taxation OfficeATO)のウェブサイトをご参照ください。

上記の4.において、土地所有者と開発主体を分離するスキームを紹介しましたが、この分離スキームは、MITの観点からも重要です。インフラや不動産の開発・投資案件において、一つの主体(entity)がインフラ・不動産を保有して、開発・運営すると当該主体は上記の(b)の要件を満たしませんが、インフラ・不動産の保有主体と開発・運営主体を分けることにより、インフラ・不動産の保有主体は受動的な投資活動を行なっているため(b)の要件を満たし、インフラ・不動産の保有主体(ファンド)への投資を行なっている海外投資家はMITの税務優遇措置を受けることができるようになります(他方で、インフラ・不動産の開発・運営主体は積極的な開発・運営活動を行なっているため(b)の要件を満たさず、当該開発・運営主体(ファンド)への投資については海外投資家はMITの税務優遇措置は受けません)。

6.Salary Sacrifice

オーストラリアの年金は基本的に確定拠出型であり、各人は年金掛金を拠出して、自らが選択する年金運用ファンド(Superannuation Fund)に運用を委託します。手間はかかりますが、自ら年金運用ファンド(Self-Managed Super Fund - SMSFと呼ばれます)を設立して年金の運用を行なう行なうこともできます。各人が将来受け取ることのできる年金額はこの委託先であるファンドの運用成績によって変わってくることになります。

雇用者は、その従業員のために給与の9.5%(この数値は2021年から毎年0.5%ずつ段階的に上がっていき最終的には2026年に12%となる予定)相当額を年金掛け金として拠出する義務を負っています(これはSuperannuation Guarantee Contributionと呼ばれます)。但し、雇用者は216,120豪ドルを超える給与部分については年金掛け金を拠出する義務は負いません(雇用者が拠出義務を負っている年金掛金額の上限は20,531.40豪ドルになります - これは2018422日現在の数値です)。

年金掛け金部分に対する所得税は特別に一律15%になっており、通常の個人の所得税の税率(前回の記事を参照)よりも低くなっています。また、年金運用ファンドからの収益分配額にかかる所得税の税率についても一律15%となっています。

年金拠出額や年金運用ファンドからの収益に課される所得税の税率15%は、個人の通常の所得(給与や投資収益)に課される所得税の税率(最大45%)よりも低いため、従業員は雇用者と合意の上、給与の一部を追加の年金掛け金として拠出する取り決めをすることにより(これがSalary Sacrificeと呼ばれます)、当該追加の年金掛け金について15%の優遇税率(通常の所得税の税率よりも低い税率)の適用を受けることができます。但し、この優遇税率が適用されるのは年間25,000豪ドルの年金掛け金までであり、この金額を超えて拠出された年金掛け金には通所の所得税の税率が適用されます。

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