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2019年5月24日 (金)

外国人によるオーストラリアの不動産の取得及び保有に関する上乗せ課税

オーストラリアで不動産を取得し、保有する場合には土地譲渡税と土地所有税がそれぞれかかるのですが、これらの税金において外国人には上乗せ課税が課されています。以下、上乗せ課税の内容について説明します。

 

(1)土地譲渡税(transfer duty

オーストラリアでは、土地の所有権を取得する際には、取得者に対して土地譲渡税(transfer duty)と呼ばれる印紙税(州の税金)が課されます。この土地譲渡税を支払わなければ、登記機関は登記申請書類を受け付けないため、土地の所有権移転の登記をすることができなくなっています。印紙税は、取引価格(消費税相当額を含む)又は市場価格(消費税相当額を含む)のいずれか高い方が課税基準額となり、その税率は累進課税で、どの州でも最大で5%程度となっています。

 

(2)土地所有税(land tax

土地所有税(land tax)は、州政府が管轄する州内の土地を保有している者に対して課す税金であり、当該州において保有している土地の価値(州政府が評価する価値)の合計金額を課税基準額として毎年課税されます。土地所有税の税率は、州毎に大きく異なりますが、基本的に累進課税で、最大で2%程度となっています。なお、唯一北部準州(Northern Territory)では、土地所有税は課されません。

 

(3)外国人に対する上乗せ課税

現在は豪州の住宅価格は下がってきていますが、2017年くらいまで豪州では住宅価格が高騰しており、その価格高騰の原因として外国人による住宅購入が槍玉に挙げられていました。そこで、外国人による住宅購入を抑制し、豪州人が住宅を取得しやすくするために、2015年以降、ほとんどの州において、外国人が居住用物件(residential property)を取得・保有することに対して、土地譲渡税・土地所有税の上乗せ課税が導入されています。

 

 

土地譲渡税

土地所有税

対象者・対象行為

上乗せ税率

対象者・対象行為

上乗せ税率

ニューサウスウェールズ州

外資買収法上の「外国人」が居住用不動産を取得する場合

8%

外資買収法上の「外国人」が居住用不動産を保有する場合

2%

ヴィクトリア州

外国の自然人、会社又は信託もしくはこれらに過半数を保有されている会社又は信託が居住用不動産を取得する場合

7%

外国の自然人、会社又は信託もしくはこれらに過半数を保有されている会社又は信託が不動産を保有する場合

1.5%

クィーンズランド州

外国の自然人、会社又は信託もしくはこれらに過半数を保有されている会社又は信託が居住用不動産を取得する場合

7%

豪州に居住していない自然人が不動産を保有する場合

1.5%

西オーストラリア州

外国の自然人、会社又は信託もしくはこれらに過半数を保有されている会社又は信託が居住用不動産を取得する場合

7%

なし

 

南オーストラリア州

外国の自然人、会社又は信託もしくはこれらに過半数を保有されている会社又は信託が居住用不動産を取得する場合

7%

なし

 

オーストラリア首都特別地区

なし

 

外国の自然人、会社又は信託もしくはこれらに過半数を保有されている会社又は信託が居住用不動産を取得する場合

0.75%

 

但し、外国のディベロッパーが住宅開発・供給のためにオーストラリアの不動産を取得する場合等、州の利益となる不動産取得については、例外的に、不動産を取得する外国のディベロッパーは州政府に対して申請を行うことにより、州政府の裁量によって土地譲渡税や土地保有税の上乗せ課税の免除を受けることができるようになっています。

 

(4)コメント

土地譲渡税の上乗せ課税は7%が多いですが、100万豪ドルの不動産を買った場合には、7万豪ドルも余計に土地譲渡税を支払うことになり、大きなコストとなります。

これらの土地譲渡税の上乗せ課税は居住用不動産の取得に適用されるため、外国人がオーストラリアの不動産を購入するのであれば、居住用不動産(一戸建、マンションなど)ではなく、商業用不動産(オフィス、店舗、ホテルなど)を取得する方が土地譲渡税の上乗せ課税を課されないため有利です。

外国人でオーストラリアの居住用不動産を購入したいのであれば、不動産譲渡税の上乗せ課税がまだ導入されていないオーストラリア首都特別地区(キャンベラ)がよいかもしれません。

なお、外国人が居住用不動産を取得する場合には、FIRBの規制により、原則として新築しか購入できなくなっています(以前の記事をご参照)。

外国人が商業用不動産(更地は除く)を取得する場合、かなり大きな金額のものでなければ、FIRBの承認は必要にならず、新築と中古のいずれでも購入できるため、FIRBの規制の観点からみても商業用不動産を取得することは居住用不動産を購入する場合に比べて有利になっています。

商業用不動産を購入すると高額ではないかと思われるかもしれませんが、商業用不動産の中にはCBDのオフィスビルの一区画(区分所有)や少し郊外にある一棟ものの店舗など居住用不動産とあまり価格が変わらないような物件もあります。

オーストラリアの商業用不動産で売りに出ている物件、価格等は、インターネット上(たとえば、www.realcommercial.com.au)でも見ることができます。 

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