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2019年5月23日 (木)

外資規制:不動産を保有する会社の株式又はユニット・トラストのユニットを取得する場合

以前の記事(「オーストラリアの外資規制」)で外国人がオーストラリアの土地に対する権益を取得する際に適用される外資規制について説明をしました。ただ、この説明は簡略化しており、オーストラリアの土地を保有する会社の株式又はユニット・トラストのユニットを取得する場合については明確には説明していません。

そこで、今回はオーストラリアの土地を保有する会社の株式又はユニット・トラストのユニットを取得する際に適用される外資規制について詳細に説明します。

 

1.土地保有主体(land entities

まずは外資規制の対象となる土地保有主体の種類について説明します。

農業用地会社(agricultural land corporation豪州の農業用地に関する権利の価値が全資産価値の50%超を占める会社

農業用地信託(agricultural land trust豪州の農業用地に関する権利の価値が信託財産の価値の50%超を占めるユニット・トラスト

豪州土地会社(Australian land corporation豪州の土地に関する権利の価値が全資産価値の50%超を占める会社

豪州土地信託(Australian land trust豪州の土地に関する権利の価値が信託財産の価値の50%超を占めるユニット・トラスト

 

2.基準値(threshold

(詳細はForeign Acquisitions and Takeovers Act 1975 (Cth)(外資買収法)第52条及びForeign Acquisitions and Takeovers Regulations 2015 (Cth)(外資買収規制)第52条を参照)

 

(1)「農業用地会社」又は「農業用地信託」

「外国人」が「農業用地会社」の株式又は「農業用地信託」のユニットを取得し、当該株式又は当該ユニットの取得対価と当該外国人が取得済の農業用地に関する既存の権益の価値の合計金額が15百万豪ドルを超過する場合には、外資買収法における「重大行為」及び「通知行為」に該当します。外国人、重大行為と通知行為の意味については以前の記事をご参照ください。

例えば、農業用地会社又は農業用地信託が保有する全資産の価値が50百万豪ドルであり、外国人が当該農業用地会社の株式又は農業用地信託のユニットの20%を取得する場合、その取得対価は10百万豪ドルとなり、当該外国人がその他に農業用地に関する権益を有していないのであれば、15百万豪ドルの基準値を下回るため、FIRBの承認は必要になりません。

 

(2)基準値ゼロの場合

外国人が豪州土地会社(農業用地会社を除く)の株式又は豪州土地信託(農業用地信託を除く)のユニットを取得する場合において、当該豪州土地会社又は当該豪州土地信託が保有する「居住用地」及び「更地の商業用地」の合計価値が当該豪州土地会社又は豪州土地信託が保有する全資産の10%以上であるときは、適用される基準値はゼロであり、外資買収法における「重大行為」及び「通知行為」に該当します。

 

(3)その他の場合

A. 外国人が「agreement country investor」である場合

外国人が「agreement country investor」であり、当該外国人が豪州土地会社の株式又は豪州土地信託のユニットを取得し、かつ上記(1)又は(2)のいずれにも該当しない場合には、基準値は1,094百万豪ドルであり、当該株式又はユニットの取得対価が同金額を超過する場合には、外資買収法における「重大行為」及び「通知行為」に該当します。

※ agreement country investorとは、アメリカ、ニュージーランド、チリ、日本、韓国、中国、シンガポール等の会社又は個人をいいます(但し、「外国政府投資家」は除外されます - 外国政府投資家の意味については、以前の記事をご参照ください)(外資買収規制第5条)。なお、オーストラリアで設立された会社はagreement country investorとならないため、日本の会社の100%子会社であるオーストラリア子会社を通じてオーストラリアの権益を取得する場合には、当該子会社はagreemnt country investorには該当せず、より高い基準値が適用されることになるため、注意が必要です。日本の会社のオーストラリア子会社は外資買収法上の「外国人」に該当します。

 

B. 外国人が「agreement country investor」ではなく、対象土地が「sensitive land」である場合

外国人がagreement country investorではなく(たとえば、日本の会社のオーストラリア子会社であるなど)、当該外国人が豪州土地会社の株式又は豪州土地信託のユニットを取得し、上記(1)又は(2)のいずれにも該当せず、かつ当該豪州土地会社又は豪州土地信託が保有する土地が「sensitive land」に該当する場合には、基準値は55百万豪ドルであり、当該株式又はユニットの取得対価が同金額を超過する場合には、外資買収法における「重大行為」及び「通知行為」に該当します。

※ sensitive landとは、更地ではない「商業用地」であり、かつ豪州の政府機関に賃貸されていたり、sensitive business(メディア、通信、運輸等)や大量データの保存のために使用されていたり、公共のインフラ(地下鉄の駅など)が含まれているものをいいいます(外資買収規制第52(6))。

 

C. その他の場合

外国人が豪州土地会社の株式又は豪州土地信託のユニットを取得し、上記の(1)、(2)又は(3)AもしくはBのいずれにも該当しない場合、基準値は252百万豪ドルであり、当該株式又はユニットの取得対価が同金額を超過する場合には、外資買収法における「重大行為」及び「通知行為」に該当します。

 

なお、上記の基準値は毎年11日に更新されることになっており、20195月現在における金額は上記で記載したものよりも若干高くなっています。最新の基準値について、こちらのFIRBのウェブサイトをご確認ください。

 

3.例外(Exemptions

外資買収法及び外資買収規制には様々な例外が定められており、上記1.及び2.においてFIRBの承認が必要になる「重大行為」及び「通知行為」に該当することになった場合であっても、それらの例外に該当する場合には、FIRBの承認は必要になりません。その例外の一つとして、不動産ファンドに対して一定割合以下の出資を行う場合があります。

不動産ファンドは、通常は「豪州土地会社」や「豪州土地信託」に該当するといえますが、以下の場合には外国人が不動産ファンドの持分を取得してもFIRBの承認は必要になりません(外資買収規制37条)。

 

(1)上場している不動産ファンド

以下の3つの条件を満たしている場合には、FIRBの承認は必要になりません。

A. 不動産ファンドが上場しているファンドであること(豪州国内で上場しているか否かを問わない)

B. 取得する当該ファンドの持分が10%未満であること

C. 当該取得する外国人が当該ファンドの経営や支配に影響を与えたり、参加したりする立場には無く、かつ当該ファンドの方針に影響、参加又は決定する立場にも無いこと

 

(2)非上場の不動産ファンド

以下の4つの条件を満たしている場合には、FIRBの承認は必要になりません。

A. 不動産ファンドが上場していないこと(豪州国内の上場か否かを問わない)

B. 取得する当該ファンドの持分が5%未満であること

C.  当該取得する外国人が当該ファンドの経営や支配に影響を与えたり、参加したりする立場には無く、かつ当該ファンドの方針に影響、参加又は決定する立場にも無いこと

D. 当該ファンドが既存の住居(established dwellings)に直接又は間接に投資する事業を行っていないこと(※ 商業物件に投資するファンドであればこの要件は満たされます)

 

上記の例外は外国投資家がオーストラリアの不動産ファンドに投資する際に非常に重要な例外となっています。

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