« 外国人によるオーストラリアの不動産の取得及び保有に関する上乗せ課税 | トップページ | 事業譲渡時の雇用の承継 »

2019年6月 3日 (月)

現代奴隷法(Modern Slavery Act)

オーストラリアでは、2015年にイギリスで導入されたMondern Slavery Actにならって、政府機関及び民間企業に対して、その事業において、また、そのサービス又は製品のSupply Chain(直接的及び間接的な仕入先)において奴隷的な扱いが行われていないかを調査し、毎年、管轄当局に報告書(Modern Slavery Statement)を提出することを義務づける制度が導入されました。

(1)連邦現代奴隷法

オーストラリアの連邦政府は、Modern Slavery Act 2018 Cth)(連邦現代奴隷法)を制定しており、201911日から施行されています

民間企業は、以下の(a)及び(b)の2つの条件を満たしている場合、連邦現代奴隷法が強制的に適用されます。

(a)(i)オーストラリアの会社その他のEntityである、又は、(ii)外国の会社その他のEntityであり、オーストラリアで事業を行っている(carry on business in Australia

(b)上記(a)の会社その他のEntity連結の年間売上高が100百万豪ドル以上ある。

上記の連結の年間売上高は、上記(a)の会社その他のEntityと当該Entityによって支配されているEntityの連結の年間売上高を指しています(当該Entityを支配しているEntityの年間売上高は連結されず、含まれない)。

たとえば、日本の会社がオーストラリアにおいて子会社を有している場合、当該子会社及びその支配するEntityの連結の年間売上高(日本の親会社の年間売上高は連結されず含まれない)が100百万豪ドル以上であれば、当該子会社には連邦現代奴隷法が強制的に適用されます。日本の親会社の連結の年間売上高が100百万豪ドル以上ある場合、当該親会社がオーストラリアで事業を行っていれば、当該親会社には連邦現代奴隷法が強制的に適用されます。「オーストラリアで事業を行っている(carry on business in Australia)」の意味については、以前の記事をご参照ください。なお、オーストラリアにおいて子会社を有していること自体によって日本の親会社がオーストラリアで事業を行っているとみなされることはありません。

日本の大企業の場合、連結の年間売上高が100万豪ドル以上であるケースが多いため、連邦現代奴隷法の強制的な適用を受けるか否かで重要となるポイントは、「オーストラリアで事業を行っている(carry on business in Australia)」か否か、という点になります。

上記で「強制的に」と書いているのは、上記の(a)及び(b)の2つの条件を満たしていない民間企業であっても自発的に(voluntarily)連邦現代奴隷法の適用を受けることを選択することができるためです。

連邦現代奴隷法の適用を受けるEntityは、201911日以降に開始する会計年度から6ヶ月以内に当該会計年度にかかる調査報告書を作成し、管轄当局(Australian Border Force)に報告書を提出する必要があります。

調査報告書の作成・提出に関する詳細は、連邦現代奴隷法に関するガイドラインに定められています。

なお、コロナウイルス(COVID 19)による影響を考慮して、2020年6月30日までに終了する会計年度にかかる調査報告書については、提出期限が3ヶ月延長されることになりました。たとえば、201941日から開始して2020331日に終了する会計年度にかかる調査報告書は元々は2020930日までに提出しなければならなかったところ、この延長措置により20201231日までに提出すればよいことになります。

(2)NSW現代奴隷法

ニューサウスウェールズ州は、Modern Slavery Act 2018 (NSW)NSW現代奴隷法)を制定し、71日から施行する予定でしたが、施行予定日直前の20196月になって突然に施行が中止され、NSW現代奴隷法には連邦現代奴隷法との不整合等があり見直しすることが必要ということで、NSW州議会の委員会で更に審議されることになりました。2020325日に委員会の報告書が発表され、この報告書の内容に沿ってNSW現代奴隷法を変更した上で202111日までに施行することを目指すことになっています。

以下は、現時点においてNSW現代奴隷法に規定されている内容ですが、今後施行までに変更される可能性があります。

民間企業は、以下の(a)、(b)及び(c)の3つの条件を満たしている場合、NSW現代奴隷法が強制的に適用されます。

(aニューサウスウェールズ州において従業員を雇用している

(b)営利目的で製品又はサービスを提供している

(c年間売上高が50百万豪ドル以上ある。

たとえば、日本の会社がオーストラリアにおいて子会社を有している場合、当該子会社がニューサウスウェールズ州で従業員を1名でも雇用しており、営利目的で製品又はサービスを提供しており、年間売上高50百万豪ドル以上である場合には、当該子会社にはNSW現代奴隷法が強制的に適用されます。

連邦現代奴隷法とNSW現代奴隷法のいずれの適用も受ける場合、両方の法律に基づいて調査・報告を行うことが必要になります。

なお、ヴィクトリア州やクイーンズランド州などでは州独自の現代奴隷法を定めてはおらず、NSW州のみが州独自の現代奴隷法を定めています。

« 外国人によるオーストラリアの不動産の取得及び保有に関する上乗せ課税 | トップページ | 事業譲渡時の雇用の承継 »

コンプライアンス」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 外国人によるオーストラリアの不動産の取得及び保有に関する上乗せ課税 | トップページ | 事業譲渡時の雇用の承継 »