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2019年11月17日 (日)

債権回収の方法

今回はオーストラリアにおいて期限に支払いを行わない取引先(会社)から債権を回収する一般的な方法について説明します。債権回収は一般的には以下のような手順で行われます。

(1)Letter of Demand(支払督促状)の送付

(2)Statutory Demand(法定請求書)の送付

(3)清算手続の開始/裁判手続の開始/担保権の実行

1.Letter of Demand(支払督促状)の送付

これは文字通り相手方に支払いを督促する通知になります。オーストラリアには日本のような内容証明の制度はないため、トラッキングができるRegistered Mailなどで相手方に送付します。支払期日を指定した上で、期日までに支払わなければ法的措置をとると伝えます。何の前触れもなくいきなり支払督促状を送付するのではなく、まずは送付前に相手方との協議があるのが通常です。協議がまとまらなければ支払督促状を出し、後日の裁判手続のために書面で証拠を残しに来ていることを示し、相手方にプレッシャーを与えます。

2.Statutory Demand(法定請求書)の送付

1.の支払督促状と異なり、Statutory Demand(法定請求書)は会社法459E条に基づいて作成されるものであり、法律上特別な効果が与えられています。

Statutory Demandは法定の書式を利用して作成し、債権者又はその代理人が署名し、支払いを求める債権とその金額を特定し、受領後21日以内に支払いを行うように要求します。また、債権者が当該債権の支払期日が到来していることを証言する宣誓供述書(Affidavit)を添付しなければなりません。また、Statutory Demandの対象となる債権は2,000豪ドル以上でなければなりません。

Statutory Demandを受領した債務会社が21日以内に支払いを行うか、又はStatutory Demandの取消しを裁判所に対して申請しない場合、Statutory Demandの不履行となり、債務会社は支払不能(insolvent)であるとみなされます。債務会社がStatutory Demandの取消しを裁判所に申請した場合、裁判所が当該債権の存在について真に争いがある、又は相殺等によって当該債権の金額が2,000豪ドル未満になったと判断すれば、Statutory Demandは取り消されます。

清算手続の開始を申し立てる場合、通常は申立てを行う債権者側で債務会社が支払不能状態にあることを立証しなければならないところ、Statutory Demandの不履行によって債務会社の支払不能が推定されるため、債権者は債務会社に対して容易に清算手続の開始を申請することができるようになります。清算手続が開始されると債務会社の事業はストップしてしまうため、Statutory Demandによって清算手続をほのめかすことにより、債務会社に対して多大なプレッシャーを与えることができます。

3.清算手続の開始/裁判手続の開始/担保権の実行

Statutory Demandが不履行となっても債務会社が支払を行わない場合、債権者として、(1)債務会社に対する清算手続の開始を申し立てる、(2)債務会社に対して支払いを求める訴訟を提起する、(3)担保権を実行する、の3つの手段が考えられます。

(1)を行ってしまうと債務会社に対して清算人が選任されて債務会社の全財産の管理を行うことになるため、債務会社の事業がストップすることになります。債権者の債権は清算手続の中で弁済されることになります。清算手続については、以前のブログ記事(オーストラリアの倒産手続(外部管理)の3.清算手続)をご参照ください。

(2)については、通常の訴訟となります。オーストラリアでの訴訟は日本の訴訟と同じく多大な時間とコストがかかります。なお、Letter of DemandStatutory Demandを出さなければ訴訟が提起できないというわけではありません。

(3)の担保権の実行については、担保契約に定める担保権実行事由(Event of Default - 支払いの遅延など)が生じていれば行えるのであり、Letter of DemandStatutory Demandを出さなければ担保権の実行が行えないということではありません。担保権の実行については以前のこちらのブログ記事もご参照ください。

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