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2021年9月

2021年9月 5日 (日)

豪州における非正規雇用の問題(幻冬舎ゴールドオンライン内の記事)

幻冬舎ゴールドオンラインでの連載記事『豪州にもある非正規雇用の問題(前編・後編)』が掲載されました。

前編:豪州にもある非正規雇用の問題…司法は「非正規」をどこまで守るのか? | 富裕層向け資産防衛メディア | 幻冬舎ゴールドオンライン (gentosha-go.com)

後編:豪州「非正規雇用者」保護の問題…司法による最終的な判断は? | 富裕層向け資産防衛メディア | 幻冬舎ゴールドオンライン (gentosha-go.com)

豪州で長年議論されてきた問題であったのですが、ある従業員がCasual(臨時雇用)かPermanent(正社員)かは、「雇用開始時点においてCasualとして雇用する合意があったか否かによって判断される(雇用開始後にどのような形態で勤務をしたかは関係ない)」という結論になりました(最高裁もそのように判断し、立法でもそのように規定されました)。

形式的な判断であり、法律関係の明確化には良いのかもしれませんが、雇用契約に「Casual」と明確に書いておけば、その後正社員と同じように働いたとしてもCasualのままということになりそうです。

これまで裁判所はどちらかと言えば法律や契約の形式的な適用によって不正義が生じる場合に、実態を考慮して正義が実現できるような判断を出してきたのですが、今回は色々事情があって上記のような形式的な判断をしたものと思います(Casualと認めると莫大な金額のBackPayの問題が生じて経済界が混乱する、Casualの保護のためには今回の立法で与えた正社員への転換請求権で十分など)。

現在未解決である請負(Independent Contractor)の保護の問題についても、上記の判断基準が適用されるとしたら、業務開始時点で契約書に明確に請負形態と規定しておけば、その後どのような形態で業務をしたとしても請負のままである(従業員にはならない)という結論になりそうです。ただ、この結論は、これまでの最高裁判例(Hollis v Vabu Pty Ltd (2001) 207 CLR 21:クーリエ便の配達員が請負か従業員かについて実際の勤務形態等の様々な要素を考慮して請負と判断した)と抵触することになるため、判例変更が必要になりそうです。

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