契約法

2019年11月16日 (土)

フランチャイズ事業に関する規制

オーストラリアでは「フランチャイズ契約」を規制するFranchising Code of ConductCompetition and Consumer (Industry Codes - Franchising) Regulation 2014 (Cth)のSchedule 1)という法律が存在しており、立場の弱いフランチャイジー側を保護するために、フランチャイズ事業には厳格な規制が課されています。

同Codeの第5条において規定されている「フランチャイズ契約」の定義に該当する場合、Franchising Code of Conductの規制が適用されることになります。

1.フランチャイズ契約(Franchise Agreement)の定義

Franchising Code of Conductが適用される「フランチャイズ契約(Franchise Agreement)」は以下のように定義されており(第5条)、以下の(a)乃至(d)の要件を全て満たす場合に該当します。

(a) フランチャイザーとフランチャイジーの間に契約があること(書面であるか、口頭であるか、黙示のものであるかを問わない)

(b) フランチャイザーがフランチャイジーに対して、フランチャイザー又はその関連者が実質的に決定し、支配し、又は提案するシステム又はマーケティングプランの下で、事業を行う権利を与えること

(c) 当該事業は、特定の商標、広告又は商業上のシンボルと十分に又は重要な点で関連付けられていること

(d) 当該事業開始前に、フランチャイジーはフランチャイザー又はその関連者に対して、支払を行い、又は支払いを行うことを合意するものであること(初期資本投資費用、商品・サービス購入代金、ロイヤルティー又はフランチャイズサービス費用、トレーニング費用など)

フランチャイズ契約にかかる規制を避けるために、先方に対して手取り足取り指導するのではなくオペレーションをある程度自由に任せることで上記のフランチャイズ契約の(b)の要件が満たされないようにするなど、フランチャイズ契約に該当しないようにする対応をとることは可能であり、実際にそのようなケースも多々あります。

2.フランチャイズ契約(Franchise Agreement)に適用される規制

「フランチャイズ契約」の定義に該当する場合に適用されるFranchising Code of Conductの規制には以下のようなものが含まれます。
・ フランチャイザーは、フランチャイズ契約の締結、更新又は延長もしくはフランチャイズ契約に関して何らかの返還不要な対価を受領するよりも14日以上前に、(1)Franchising Code of Conduct、Disclosure Document(CodeのAnnexure 1に記載事項が規定されている。フランチャイジーの財務に関する情報も含まれる。)並びにフランチャイズ契約(及びこれに付随して締結する他の契約)をフランチャイジーに提供しなければならず(Code第9条)、かつ(2)フランチャイジーがDisclosure DocumentとCodeを受領し、確認し、理解するための合理的な機会が与えられた旨の書面をフランチャイジーから受領しなければならない(Code第10条(1))

・ フランチャイザーは、フランチャイズ契約の締結前に、フランチャイジーがフランチャイズ契約やフランチャイズ事業に関して独立した弁護士、会計士、ビジネスアドバイザーからアドバイスを受けた旨のフランチャイジーの署名済書面(もしくはフランチャイジーに対してアドバイスを与えた旨の弁護士、会計士又はビジネスアドバイザーの署名済書面)、又はそのようなアドバイスを受けるように言われたがアドバイスを受けないことに決定した旨のフランチャイジーの署名済書面をフランチャイジーから受領しなければならない(Code第10条(2))

・ フランチャイザーは、フランチャイジーがフランチャイズ事業について正式な申し込みを行った場合又は興味を示した後できる限り早急に、フランチャイジーに対してInformation StatementCodeAnnexure 2のフォーマットを使用)を提供しなければならない(Code11条)

・ フランチャイザーは、(1)フランチャイザー又はフランチャイズシステムの支配権の変更(Change of Control)が発生した場合、(2)フランチャイザーに対するフランチャイズ契約の違反等のフランチャイズシステムに影響を与える一定の訴訟手続や判決がなされた場合、(3)フランチャイズシステムに重要な知的財産権又はその支配権に変更が発生した場合には、フランチャイジーに対して合理的な期間内に(ただし遅くとも14日以内に)書面通知しなければならない(Code17条)

・ フランチャイズ契約の期間終了の6ヶ月前までに(フランチャイズ契約の期間が6ヶ月未満である場合に期間終了の1か月前までに)、フランチャイザーは、フランチャイジーに対して、フランチャイズ契約を延長し、又は新たなフランチャイズ契約を締結する予定であるかを書面通知しなければならない(Code18条)

・ フランチャイズ契約では、フランチャイジーがフランチャイジーに対して負っている債務を一般的に免除する規定、又はフランチャイザーが口頭又は書面で行った表明を放棄する規定を定めてはならない(Code20条)

・ フランチャイズ契約では、フランチャイズ契約に関する紛争解決手続をオーストラリア国外で行うことを要求する規定を設けてはならず、そのような規定は無効となる(Code第21条)。

・ フランチャイズ契約では、フランチャイズ契約の下での紛争を解決した場合にフランチャイザーが負ったコストをフランチャイジーに負担させる規定を設けてはならず、そのような規定は無効となる(Code22条)

・ フランチャイズ契約に定めたフランチャイジーの競業避止義務は、フランチャイズ契約の終了後は、フランチャイジーが一定の要件を満たす場合には効力を有さない(Colde23条)

・ フランチャイジーは、フランチャイズ契約を締結した日又はフランチャイズ契約に基づく支払いを行った日のいずれか早い方から7日以内であれば、フランチャイズ契約を解除することができる(Cooling-off period)(Code26条)

・ フランチャイジーがフランチャイズ契約に違反した場合、フランチャイザーは、フランチャイジーに書面通知を出し、フランチャイズ契約を解除する意図があることを伝え、違反を治癒するためにフランチャイジーが行うべきことを知らせ、合理的な治癒期間を与える必要があること(Code第27条)

・ フランチャイザーは、フランチャイズ契約の期間中、フランチャイジーに対してフランチャイズ事業に関して重大な資本支出(significant capital expenditure)を行うことを要求してはならない(ただし、フランチャイジーが合意したもの、法令順守に必要なもの等は除く)(Code30条)

・ フランチャイジーは、フランチャイジーが支払ったマーケティング費用及び広告費用について別個の銀行口座で管理しなければならず、当該費用はDisclosure Documentで開示された項目等のために使用しなければならない(Code31条)

・ フランチャイズ契約には、フランチャイザー・フランチャイジー間のフランチャイズに関する紛争を当事者間で解決するための手続を定めておかなければならない(Code34条)。

3.違反した場合の罰則等

Franchising Code of Conductに関するオーストラリアの規制当局であるAustralian Competition and Consumer CommissionACCCです。フランチャイジーはCodeの違反についてACCCに申立てを行い、ACCCはフランチャイジーに対して違反の有無を調査します。調査の結果、違反があることが判明した場合、ACCCはフランチャイジーに対してInfringement Noticeを出して罰金を課したり、又はフランチャイジーに対して訴訟を提起することができます。

 

上記の通り、オーストラリアには厳格なフランチャイズ規制があり、規制当局によって規制は厳格に執行されているため、フランチャイジー候補とフランチャイズ契約を締結する際には、オーストラリアの弁護士のアドバイスを受けることが必要です。

なお、フランチャイズの規制に関しては、規制当局であるACCCのウェブサイトに詳しい情報が記載されていますので、詳細はそちらをご参照ください。

また、フランチャイズ事業を開始しようとしている人向けの無償のオンライン教育プログラムも提供されていますので、自分でフランチャイズ事業を行うことを考えている方は、そちらもご参照ください。

【2019123日追記:20179月に施行されたFair Work Amendment (Protecting Vulnerable Workers) Act 2017 (Cth)によってFair Work Act 2009 (Cth)が改正され、フランチャイザーがフランチャイジーの事業について相当程度(a significant degree)の影響を与えたり、支配を及ぼしている場合において、フランチャイザーがフランチャイジーによるその従業員に対する労働法違反(最低賃金の不払いなど)が発生したこと又は発生する可能性があることを知っていた又は合理的に知りうべきだったにもかかわらず、当該違反を防止するための合理的な措置を取らなかったときは、フランチャイザーは当該違反について責任を負うことになりました。】

 

2017年2月17日 (金)

第三者のためにする契約(Privity Doctrineの例外)

豪州の契約法では、「契約の当事者ではない者は当該契約の履行を強制することはできないし、当該契約に基づく義務をうことはできない」という原則があります(Privity Doctrineと呼ばれます)。このPrivity Doctrineは、豪州の契約法における根本的な原則となっています。

日本法(民法)でもこの原則は同様に当てはまりますが、民法第537条においてこの原則の例外を定めており、契約の当事者が当該契約において第三者(当該契約の当事者ではない者)に対して利益を与え、当該第三者が当該当事者に対してその利益を享受する意思表示を行った場合には、当該第三者が当該当事者に対して当該利益の給付を強制できると定めています。

豪州の契約法は、主に過去に裁判所が出した判決(判例)の集積から構成される判例法(コモンロー)ですが、判例法ではPrivity Doctrineが維持されており、民法第537条のような例外は認められていません。豪州法の源流となっているイギリス法では、Contracts (Rights of Third Parties) Act 1999を制定し、このPrivity Doctrineの例外を認め、契約書において第三者に権利を与えることが可能となっています。豪州の中でもクイーンズランド州、西オーストラリア州、北部準州では、州・準州が定める制定法によって、イギリスと同様にこのPrivity Doctrineの例外を認めています(Property Law Act 1974 (QLD)55条、Property Law Act 1969 (WA)11条、Law of Property Act (NT)56条)。他方、ニューサウスウェールズ州やヴィクトリア州では、同じような州法が存在せず、Privity Doctrineの例外が認められていません(したがって、契約書において第三者に権利を与えることができません)。

Privity Doctrineの例外を認める制定法がないニューサウスウェールズ州やヴィクトリア州の事業に関する契約書において第三者に権利を与えたい場合には、以下の2つの方法が考えられます。

一つ目の方法は、契約書の準拠法をクイーンズランド州法や西オーストラリア州法として定め、契約書において第三者に権利を与えることを可能とするProperty Law Act 1974 (QLD)55条、Property Law Act 1969 (WA)11条の適用を受けるようにすることです。具体的な契約書の文言としては、「This agreement is governed by the law of Queensland. It is intended that, pursuant to section 55 of the Property Law Act 1974 (QLD), this agreement be enforceable by [Third Party] as contemplated by clause ##.」といったものが考えられます。

二つ目の方法は、契約書をDeed(捺印証書)の形式で締結することです。以前にこのブログの「Deed(捺印証書)とは何か」という記事で説明しましたが、Deedの形式で契約書を締結すれば、契約の当事者ではない第三者に対して権利を与えることができます。具体的な契約書の文言としては、「This deed takes effect as a deed between the parties and a deed poll given by [Promisor] in favour of [Third Party], and is intended that this deed be enforceable by [Third Party] as contemplated by clause ##.」といったものが考えられます。

上記のとおり、オーストラリア法では、日本法と異なり、契約書において第三者に対して権利を与えることが当然に認められるわけではなく、上記の2つの方法のいずれかを採る必要があるため、注意が必要です。上記の方法を採らずに契約書において第三者に対して与えたはずの権利が無効であったという事態が生じることは避けなければなりません。 

2017年2月 5日 (日)

AssignmentとNovationの違い

オーストラリア法において、ある者が契約上の権利や義務を契約当事者以外の者に対して移転する場合には、Assignment(譲渡)とNovation(更改)という2つの方法があります。

1.Assignment

Assignmentは、契約上の権利を、その性質を変えずに同一性を保ったまま、別の者に移転する行為です。したがって、債務者が有していた債権者に対する抗弁等はそのまま譲受人に引き継がれます。Assignmentは、法律上は、元の債権者が債務者に対する書面通知を行なうだけで、債務者の同意を得なくとも行なうことができます(Civil Law (Property) Act 2006 (Cth)205条、Conveyancing Act 1919(NSW)12条、Property Law Act 1958 (VIC)134条、Property Law Act 1974 (QLD)199条等)。但し、契約書上、権利の譲渡(Assignment)について債務者の同意が必要であることが規定されている場合には、債務者の同意が無ければ行なうことはできません。なお、Assignmentが行われた場合、元の債権者は、契約上の権利を譲渡した後も、引き続き同契約上の義務を債務者に対して負うことになります(契約上の権利の譲渡は行なわれるが、契約上の義務の譲渡は行なわれない)。

2.Novation

Novationは、譲渡人(元の債権者)、譲受人(新しい債権者)及び債務者の三者間でなされる合意により、譲渡人と債務者との間の元の契約を消滅させ、譲受人と債務者との間で新しい契約を成立させる行為です。これにより譲渡人は債権者ではなくなり、譲受人は新しい債権者となります。Novationには必ず債務者の同意が必要であり、譲受人が取得する権利・義務の内容は(元の債権者に対する抗弁等が承継されるか否かも含めて)Novationに関する契約書の中で定められます。

3.日本法との相違

日本法と異なり、オーストラリア法のAssignmentでは、契約上の義務を譲渡することはできませんので、契約上の義務を第三者に移転させたい場合には、Novationの方法によることになります。例えば、オーストラリアにおいて、金融機関の間でローン債権の売買を行なう場合、売主、買主及び債務者の三社間でNovation Deedを締結して行うことが多いといえます。また、A社がB社の事業を買収した場合、B社の事業上の契約(従業員との雇用契約を含む)をA社に移転させることになりますが、この移転に用いられるのは通常はNovationであり、Assignmentではありません。Assignmentが用いられる場合もありますが、その場合には、売主が買主に契約上の権利をAssignmentにより譲渡した上で、売主に残る契約上の義務を買主が売主に代わって履行する旨の取決めがなされます。

日本では、契約上の義務の譲渡が可能であるため、ローン債権や契約の譲渡の際には、Assignmentが用いられ、Novationが用いられることは皆無ですが、オーストラリアではNovationが用いられることが多いといえます。なお、オーストラリア法上、黙示のNovationも認められるため、契約相手方が事業譲渡の通知を受けた後で、買主に対して契約上の義務を履行した場合等(例:買主の口座に代金支払を行う等)、には黙示のNovationがあったものとすることもできます。

2016年2月10日 (水)

契約締結権限の確認方法

日本では、契約書上にA氏の実印の印影が認められる場合、契約書への捺印がA氏の意思に基づくものと事実上推定され(最高裁判所昭和39512日判決)、さらに契約書はA氏の意思に基づいて作成されたと法律上推定されます(民事訴訟法2284項)。いわゆる、二段階の推定と呼ばれるものです。このため、会社が契約書の署名者となる場合には、当該会社の実印である代表者印を捺印させ、当該会社の代表者事項証明書と印鑑証明書を提出させて契約書上の印影と照合させることにより、当該会社の実印が捺印されており、上記の二段階の推定が適用されることを確認するのが通常です。

オーストラリアでは、オーストラリアで設立された会社について、その会社の取締役2名(又は取締役1名と秘書役1名の合計2名)が契約書に署名した場合は、当該会社は有効な権限に基づいて当該契約書を締結したものと推定され、契約相手方が契約書締結時点において有効な権限がないことについて知っていたり、又は疑っていたという事情が無い限り、当該会社はこの推定を覆すことはできないとされています(オーストラリア会社法第128条、第129条第5項及び第127条第1項)。したがって、オーストラリアの会社による契約締結が有効に行なわれたか否かを確認する場合、契約相手はASICから当該会社の登記情報を取得して、当該会社の取締役及び秘書役が誰であるかを確認し、登記されている取締役2名(又は取締役1名と秘書役1名の合計2名)が契約書に署名をしていれば、上記の会社法に基づく推定によって契約相手は保護されることになります。本当に取締役又は秘書役の本人が署名したのかを確認するために、さらに署名した取締役又は秘書役のパスポートや運転免許証(本人の署名が含まれている)の写しを提出させることもあります。

なお、取締役が1名のみで、当該取締役が秘書役も兼ねている会社の場合、当該取締役兼秘書役1名の署名をもって上記の会社法上の推定が適用されます。取締役が1名のみだが、当該取締役が秘書役を兼ねていない会社(秘書役が設置されていない場合を含む)の場合、当該取締役が署名をしたとしても上記の会社法上の推定は適用されませんので、注意が必要です。

2015年11月14日 (土)

Deed(捺印証書)とは何か

オーストラリアの契約書では、「●● Agreement」という名称のもの(例:Distribution AgreementShareholders Agreement)の他に、「●● Deed」という名称のもの(例:Deed of VariationConfidentiality Deed)がよく見られます。Deed(捺印証書)とは、契約書の形式の一種であり、通常の契約書よりも厳しい締結方法が要求される代わりに、通常の契約書にはない特別な効果が与えられます。日本法にはDeedに相当する概念はありません。

1.締結方法

Deedとして契約書を締結するためには、契約書においてDeedとして契約書を締結することを明確にした上で(契約書の名称を●● Deedとする等)、以下の方法で契約書に署名をします。

契約書の当事者が個人の場合:契約書の署名欄に「Signed, sealed and delivered by [個人の氏名]」と記載した上で、当該個人が署名します。さらにその署名に証人に立ち会ってもらい、当該証人も当該個人の署名の横に自己の氏名を記載して、署名をします。証人は18歳以上の成人(豪州法上は18歳が成人年齢)であり、契約の当事者以外の者であれば誰でも構いません(当該個人の親戚、弁護士等の関係者であっても構いません)。

<署名欄の例>

Signed, sealed and delivered by [Name of Individual] in the presence of:

 

 

 

 

 

 

 

Signature of witness

 

 

Signature

 

 

 

 

Name of witness

 

 

 

契約書の当事者がオーストラリアの会社の場合(取締役が2名以上いる会社又は取締役1名と秘書約1名が異なる会社) :契約書の署名欄に「Executed by [会社名] in accordance with section 127 of the Corporations Act 2001 (Cth)」と記載した上で、「2名の取締役(Director)」又は「1名の取締役と1名の秘書役(Company Secretary)」が自己の氏名を記載して、署名をします。オーストラリアの会社法第127条では、このような署名方法によりオーストラリアの会社がDeedを締結できると規定しています。

<署名欄の例>

Executed by [Name of Company] in accordance with section 127 of the Corporations Act 2001 (Cth):

 

 

 

 

 

 

 

Signature of director

 

 

Signature of company secretary/director*

 

 

 

 

Name of director

 

 

Name of company secretary/director*

*delete whichever is not applicable

※ 2名の取締役が署名する場合には、上記の右の署名欄の「company secretary/」という部分を横線で消し(company secretary/director)、1名の取締役と1名の秘書役が署名する場合には上記の右の署名欄の「/director」という部分を横線で消します(company secretary/director)。

契約書の当事者がオーストラリアの会社の場合(唯一の取締役が唯一の秘書役も兼ねている非公開会社(proprietary company)の場合):契約書の署名欄に「Executed by [会社名] in accordance with section 127 of the Corporations Act 2001 (Cth)」と記載した上で、「取締役(Director)兼秘書役(Company Secretary)」が自己の氏名を記載して、署名をします。オーストラリアの会社法第127条では、このような署名方法によりオーストラリアの会社がDeedを締結できると規定しています。

<署名欄の例>

Executed by [Name of Company] in accordance with section 127 of the Corporations Act 2001 (Cth):

 

 

 

 

 

 

 

Signature of sole director and sole company secretary

 

 

Signature of sole director and sole company secretary

※ 取締役が1名しかおらず秘書役を設置していない会社の場合、会社法第127条に基づくDeedの締結はできないことになります。この場合、Common Law(判例法)に基づくDeedの締結方法を用いなければなりませんが、ここではその締結方法の説明は省略します。会社法第127条のDeedの締結方法が使用できるように、取締役が1名しかいない場合には秘書役を設置して取締役が秘書役も兼ねるようにした方が良いといえます。

契約書の当事者がオーストラリア以外の会社の場合:オーストラリア以外の会社(日本の会社等)には、会社法第127条の適用はないため、上記のオーストラリアの会社の署名欄とは異なります。署名欄に「Signed, Sealed and Delivered for and on behalf of [Name of Company] by its authorised signatory in the presence of」と記載した上で、会社の印鑑(Common Seal)を捺印し(Common Sealがない会社の場合には下記のように中にSealと記載した円を記載することで構わない)、会社を代表して契約を締結する権限を有する者が署名し、その署名に立ち会った証人も署名します。

※ 会社の印鑑の捺印又はSealという円の記載が必要になるのは、Deedの有効な締結要件であるSigningSealing及びDeliveryのうちのSealingの要件を満たすためです。なお、上記の契約の当事者が個人である場合、特別法によって、当該契約がDeedと表示されており、かつ当該個人が証人に立ち会ってもらって署名してもらえばSealingがあったものとみなされるため、印鑑の捺印は必要となっていません。また、上記の契約の当事者がオーストラリアの会社である場合、オーストラリアの会社法第127条に従った署名方法で署名すればSealingはなくともDeedを締結できることになっています。

<署名欄の例>

Signed, Sealed and Delivered for and on behalf of [Name of Company] by its authorised signatory in the presence of:

 

 

Aon

 

 

 

 

Signature of witness

 

 

Signature of authorised signatory

 

 

 

 

Name of witness

 

 

Name of authorised signatory

契約書の当事者の代理人(Attorney)が署名する場合:契約の当事者が個人であれ会社(外国会社を含む)であれ、当該当事者の代理人(Attorney)が署名する場合、以下の例のように契約の当事者が誰であるかを明確に示して、当該当事者の代理人として署名することを明確にした署名欄とします。当事者が代理人に対してDeedを締結する代理権を付与する委任状(Power of Attorney)は、Deedの形式で締結されている必要があります。代理人が契約に署名する場合には、契約の相手方は代理人に署名権限を付与する委任状を提出させて、Deedの形式で締結されているか確認をすることになります。

<署名欄の例>

Signed, Sealed and Delivered for and on behalf of [Name of Company] by its attorney under a power of attorney date [Date] in the presence of:

 

 




 

 

 

 

Signature of witness

 

 

Signature of attorney

 

 

 

 

Name of witness

 

 

Name of attorney

 

なお、オーストラリアでは最近契約書の締結に電子署名(electronic signature)を使用することが見られるようになってきました。しかし、Deedについては電子署名を使用して締結することはできないという見解が一般的です。電子署名システムを提供する会社でもDeedの締結には電子署名を使用しないように注意しています(例えば、Adobeこの記事4.4を参照)。電子署名を使用する場合には締結しようとしている契約書がDeedではないことを確認する必要があります。

 

2.特別な効果

Deedとして締結された契約書には、通常の契約書にはない特別な効果が与えられます。特別な効果はいろいろあるのですが、ここでは以下の3つを取り上げます。

(1)Deedに基づく権利については、時効が成立する期間が通常の契約に基づく権利よりも長くなっており、通常の契約であれば6年であるところが12年に延長されています(「オーストラリアの時効制度(1)-Limitation Period」参照)。したがって、Deedに基づく権利は時効がより成立しにくくなっています。

(2)Deedの形式による契約は、約因(Consideration)が存在しなくても契約として成立します。約因というのは価値の交換であり、オーストラリア法では、契約の当事者が価値のある約束を交換しなければ契約は成立しないことになっています。このため、一方の当事者が他方の当事者に対して対価なしに価値あるものを与えるという契約(たとえば贈与契約)は、約因が存在しないため、契約として成立しないことになります。しかし、例外的に、Deedの形式によって契約を締結する場合には、約因が存在しなくても契約として成立することができます。

(3)Deedの形式による契約は、契約の当事者ではない者に対しても権利を与える(義務を負う)ことができます。日本法では、民法第537条により、契約により当事者の一方が契約の当事者ではない第三者に対して権利を与える(義務を負う)ことが認められています。しかし、オーストラリア法では、契約の当事者は他の契約の当事者に対して権利を与える(義務を負う)ことはできますが、契約の当事者ではない第三者に対しては権利を与える(義務を負う)ことはできません(この原則をDoctrine of Privityといいます)。Deedの形式による契約の場合、当該Deedの当事者は、当該Deedの当事者ではない第三者に対しても権利を与えることができ、当該第三者は当該当事者に対してこの権利を執行することができます。ある者が第三者に対して一方的に権利を与える(義務を負う)Deedは、特にDeed Pollという名称で呼ばれます。例えば、A社がB社から秘密情報の提供を受ける場合において、B社がA社に対して秘密保持に関するDeed PollA社は署名するがB社は署名しない)を差し入れるといったことが考えられます。この場合、A社はDeed Pollに署名していませんが、B社に対してDeed Pollに規定されている守秘義務をA社に対して強制することができます。

2015年7月12日 (日)

ジョイント・ベンチャーの形態(2)-税務上の観点からの考察

前回は法務的観点からJVの形態について考察しましたが、今回は税務上の観点からの考察をします。

税務上ポイントとなるのは、主に、(1)JVのビジネスの損失を他のビジネスの利益と通算させて相殺することができるかどうかという点、及び(2)JVのビジネスの利益を配当等によって出資者に還元する場合に柔軟に行うことができるか、また、二重課税を課されることはないか、という点であるといえます。

 

 

 
 

Incorporated JV

 
 

Unincorporated JV

 
 

信託(Unit Trust

 
 

概要

 
 

JVビジネスに関する損益の計算を行い、JV会社が当該損益の計算に基づいて税金(所得税)を支払うことになります。JV当事者とJV会社は別Entityであり、それぞれ個別に損益の計算を行い、税金を支払うことになります。

 
 

JVビジネスに関する損益の計算を行い、その損益の結果はJV持分割合に基づいてJV当事者に帰属します。JV当事者は自己に帰属するJVビジネスの利益について税金(所得税)を支払います。

 
 

JVビジネスに関する損益の計算を行い、その損益の結果を信託(Unit Trust)に対する受益権の持分(Unit)割合に基づいてJV当事者に帰属します。JV当事者は自己に帰属するJVビジネスの利益について税金(所得税)を支払います。

 
 

JVビジネスの損失をJV以外のビジネスの利益と相殺できるか

 
 

JV会社で生じた損失(JVビジネスの損失)をJV当事者の他のビジネスの利益と相殺させてJV当事者の利益を減少させて納税額を減らすことはできません。

但し、一定の条件を満たせば、JV会社はJVビジネスの損失を翌年以降に繰り越し、翌年以降にJV会社に発生する利益と相殺することができます。

 
 

JV当事者はJVビジネスの損益を他のビジネスの損益と通算して損益計算を行うことができます。

また、一定の条件を満たせば損失を翌年以降に繰り越すこともできます。

 
 

信託で生じた損失(JVビジネスの損失)は信託レベルで留まり、JV当事者の他のビジネスの利益と相殺させることはできません。

但し、一定の条件を満たせば、信託はJVビジネスの損失を翌年以降に繰り越し、翌年以降に信託に発生する利益と相殺することができます。

 
 

JVビジネスの利益還元に関する要件及び税金

 
 

JV会社の利益や財産をJV当事者に還元するためには会社法上の利益配当の要件(債務超過でないこと、十分な会計上の利益があること等)を満たす必要があります。

JV当事者はJV会社からの配当に所得税を課されます。ただし、JV会社のレベルで支払った配当利益にかかる所得税は、JV当事者が支払う所得税から差し引くことができます(Franking   Creditといいます)。

 
 

JVビジネスの利益はすでにJV当事者に帰属しており、還元をする必要はありません。

 
 

信託財産をJV当事者に還元することは信託契約の規定に従って行われますが、会社法の利益配当の要件のようなものはなく、十分な会計上の利益がない場合でもJV当事者に対する還元を行うこともできます。会社の減資に相当する信託財産の払い戻しも会社法上の減資の要件の適用を受けず、信託契約に従って行うことができます。

信託レベルでは所得税は課されませんが、JV当事者は信託からの配当に所得税を課されます。

 

上記のとおり、税務上の観点から見るとUnincorporated JVが優れており、特にJV当事者がJVビジネスの損益を他のビジネスの損益と通算して損益計算を行うことができるという点のメリットは非常に大きいといえます。

Unincorporated JVのデメリットは、前回説明したとおり、JVに関する債務についてJV当事者が無限責任を負うという点ですが、このデメリットについてはJV当事者自体を特別目的会社(Special Purpose Company)にすることによって対応することができます。

豪州の資源関係分野でよく見られるのは、豪州の統括会社の下に、プロジェクト毎に会社(SPC)を設立し、当該SPCJV相手とUnincorporated JVを組成するというものです。豪州の統括会社の下にプロジェクトの数だけSPCがぶら下がることになりますが、これらの統括会社とSPCをまとめて連結納税の対象とすることで各SPC(各プロジェクト)の損益を通算させることができます。

以上、前回と今回で法務及び税務上の観点からジョイント・ベンチャーの形態を考察してきましたが、細かい問題は他にも数多くあり、各形態のメリット・デメリットを総合的に考慮した上で、ジョイント・ベンチャーの形態を決定する必要があります。

2015年6月 9日 (火)

ジョイント・ベンチャーの形態(1)-法務的観点からの考察

日本企業がオーストラリアに投資する場合、オーストラリア又はその他の国の企業と共同出資(ジョイント・ベンチャー)によってビジネスを行うことがあります。特に大規模な資源・インフラ・不動産開発プロジェクト等でジョイント・ベンチャーは多く見られます。

 

ジョイント・ベンチャーの形態には、大きく分けて、Incorporated Joint-VentureUnincorporated Joint-Venture及び信託(Unit Trust)の3種類があります。これらの3種類のジョイント・ベンチャーの形態について、以下の表のとおり、法務的観点からの考察をまとめてみました(この他にもパートナーシップといった形態もありますが、あまり実務では使用されていないのでここでは割愛します)。 

 

 

 

 
 

Incorporated JV

 
 

Unincorporated JV

 
 

信託(Unit Trust

 
 

概要

 
 

「会社」をJVEntityとして使用し、JV当事者は当該会社に対して出資をすることによってJV関係を構築します。

 

 

 
 

JVEntityを作らず、JV当事者の間でJVの権利・義務関係を規律するJV契約を締結し、当該契約に従ってJV当事者がJVビジネスを行うものです。これは簡単に言うと、JV当事者間で共同でビジネスを行うJV契約を締結しただけのJVになります。

 

 

 
 

JV当事者間で出資をして信託の受託者となる会社を設立します(この会社はCorporate Trusteeといわれます)。この会社は最小限の資本金(各JV当事者が1ドルずつ出資する等)によって設立されるのが通常です。JV当事者はこの会社を受託者として財産(金銭等)を出資し、これを信託財産とします。受託者はこの信託財産を使ってJVビジネスを行います。受益者であるJV当事者は受託者に対する指示を出して、JVビジネスをコントロールすることになります。

 
 

法人格

 
 

JVは会社ですので、法人格を有し、JVの権利・義務はJV会社に帰属することになります。

 
 

JVに法人格はなく、JVの権利・義務は全てJV当事者に直接に帰属することになります。

 
 

信託(Unit Trust)には法人格はありませんが、受託者は会社ですので法人格はあります。外部との権利・義務関係は全て受託者に帰属することになります。

 
 

責任の限定

 
 

JVの債務についてはJV会社が責任を負い、株主有限責任の原則により、JV当事者(JV会社の株主)はJV会社の債務について責任を負いません。

 
 

JV当事者はJVに関する債務について無制限に責任を負い、JV事業に関する債務の債権者から直接に請求を受けることになります。

 
 

JVに関する債務については受託者が責任を負い、外部からの請求に対しては受託者が矢面に立つことになります。信託契約を適切に作成することによって、JV当事者(受益者)は信託財産の限度で責任を負うようにすることができます(これはIncorporated JVで株主がJV会社に対する出資の限度で責任を負う株主有限責任と同じです)。

 
 

JVの持分割合

 
 

JV当事者のJVに対する持分割合は、JV当事者が保有するJV会社の株式数によって表されます。

 
 

JV契約の中でJV当事者の持分割合を定め、その持分割合に応じてJV当事者はJVの資産及び権利・義務を有することになります。

JVの資産は持分割合に応じたJV当事者間での共有となり、JVの負債はJV当事者が持分割合に応じて負担します。

 
 

JV当事者のJVに対する持分割合は、信託(Unit Trustと呼ばれます)に対する受益権の持分(Unit)の割合によって表されます。

 
 

JVのガバナンス

 
 

JVのガバナンスは、会社法、定款及び株主間契約によって規律され、株主総会・取締役会といったガバナンスの組織及び権利・義務関係は明確に規定されることになります(例えば、会社法において、会社の一定の事項について株主総会決議事項であると定めていたり、株主には会社に対する一定の情報請求権が認められていたりするため、下記のUnincorporated JVほどには株主間契約に詳細にガバナンスの組織及び権利・義務関係について規律する必要性は低いともいえます)。

 
 

JVのガバナンスの組織及び権利・義務関係は全てJV契約の内容は詳細に定める必要があります(例えば、JVの意思決定をする運営委員会をどのように構成するか、JVのどういった事項をJV当事者(運営委員会)の全会一致決議事項とするのか等について、JV契約で詳細に定めなければなりません)。

 
 

JVのガバナンスは、信託法、受託者の定款、信託契約及び受益者間契約(Unit-Holders Agreement)等によって規律されることになります。受託者のガバナンスと信託のガバナンスの2つに分かれることになりますが、信託のガバナンスについてはUnincorporated JVの場合のように特に詳細に信託契約及び受益者間契約で定める必要があります。

 
 

譲渡可能性

 
 

JV持分の譲渡はJV会社の株式譲渡によって行われます。通常は、株主間契約においてJV会社の株式譲渡については、他のJV当事者の同意が必要とされていたり、他のJV当事者に先買権が与えられていたりします。

 
 

JV持分を譲渡する場合、JV当事者の資産及び契約関係(契約上の地位)を譲渡することになるため、資産譲渡と同じく煩雑であり、(JV契約に別段の定めが無い限り)他のJV当事者の同意が必要になります。

 
 

JV持分の譲渡は、受託者の株式譲渡及び信託持分(Unit)の譲渡によって行われます。通常は、受託者の定款及び/又は受益者間契約等において、これらの譲渡について他のJV当事者の同意が必要とされていたり、他のJV当事者に先買権が与えられていたりします。

 
 

配当方法

 
 

JV事業の利益はJV会社の株主(JV当事者)に対する配当という形で行われます。配当を行うためには、会社に配当可能利益があること、株主総会決議を得ていること等の会社法上の要件を満たす必要があります。

 
 

JV事業に関する損益は各JV当事者に直接に帰属することになるため、JVからJV当事者に対する配当はそもそも行われません。

 
 

JV事業の利益は信託の受益者に対する利益分配といった形で行われます。利益分配は信託契約等に従って行われる必要がありますが、会社と異なり会社法上の要件は適用されないため、配当可能利益がない場合でも利益分配を行うことができます。

 

 

以上、色々と書きましたが、法務の観点から一番重要なのはJVの債務に関する責任が有限であるか否かであるといえます。Unincorporated JVですと無限責任を負うことになるため、この点はUnincorporated JVの大きな欠点となります。ただ、Unincorporated JVには、この無限責任を負うという欠点を上回る税務上の大きなメリットがあるため、Unincorporated JVはオーストラリアのJVで広く用いられています。

 

次回は税務上の観点からJVの形態を考察します。

2015年5月30日 (土)

時効の中断

日本の時効制度と同じように、オーストラリアの時効制度にも「時効の中断」という概念があり、ある一定の事由(時効中断事由)が発生した場合、時効期間のカウントはリセットされ、時効中断事由の発生日から再度カウントされることになります。

主たる時効中断事由には、「承認」(Acknowledgment)と「一部支払い」(Part payment)があります。「承認」とは、時効の対象となっている債務について当該債務を負っている者が当該債務の存在を認めることをいいます。この債務の承認は書面でなされなければならず、また、当該債務者による署名が必要になります。「一部支払い」とは、時効の対象となっている債務について当該債務を負っている者が当該債務の一部を支払うことをいいます。

 

前回に説明したとおり、時効の制度は州法が管轄する事項ですが、上記の「承認」と「一部支払い」が時効中断事由であるという点については、いずれの州の法律もほぼ同じとなっています。

 

なお、日本法と異なり、オーストラリア法では、裁判外の請求(催告)によって時効の完成を遅らせることはできません。時効の完成前に上記の「承認」や「一部支払い」といった時効の中断を行えない場合には、裁判上の請求をしなければ(すなわち、裁判手続を開始して請求を行わなければ)時効が完成してしまいます。

オーストラリアの時効制度

オーストラリアにも時効制度があり、権利が発生してから一定期間(Limitation Period)を経過しても当該権利を行使しない場合には、当該権利について裁判等の法的手続を行うことができなくなります(Limitation of Actionsと呼ばれます)。

時効制度は州法が管轄する分野であり、州毎に時効制度に関する法律が定められていますが、その内容は似通っています。オーストラリアの主要な州における時効期間を以下にまとめましたので、ご参照ください。

 

 

 

 
 

 

 
 

ニューサウスウェールズ州

 
 

ヴィクトリア州

 
 

クィーンズランド州

 
 

西オーストラリア州

 
 

 
 

契約又は不法行為に基づく請求(但し、2~6に該当するものを除く)

 
 

請求原因が発生した日から6年間(但し、契約がDeed(捺印証書)の形式によるものである場合には12年間)

 
 

請求原因が発生した日から6年間(但し、契約がDeed(捺印証書)の形式によるものである場合には15年間)

 
 

請求原因が発生した日から6年間(但し、契約がDeed(捺印証書)の形式によるものである場合には12年間)

 
 

請求原因が発生した日から6年間(但し、契約がDeed(捺印証書)の形式によるものである場合には12年間)

 
 

 
 

人身傷害に関する損害賠償請求(自動車事故、労働災害等について別段の定めがある場合を除く)

 
 

請求原因が発見可能となって日から3年間又は人身傷害が生じた日から12年間のいずれか早い方(但し、裁判所命令で延長可能)

 
 

請求原因が発見可能となって日から3年間又は人身傷害が生じた日から12年間のいずれか早い方(但し、裁判所命令で延長可能)

 
 

請求原因が発生した日から3年間(但し、裁判所命令で延長可能)

 
 

請求原因が発生した日から3年間(但し、裁判所命令で延長可能)

 
 

 
 

名誉毀損に関する請求

 
 

名誉毀損行為がなされた日から1年間(但し、裁判所命令で3年間まで延長可能)

 
 

名誉毀損行為がなされた日から1年間(但し、裁判所命令で3年間まで延長可能)

 
 

名誉毀損行為がなされた日から1年間(但し、裁判所命令で3年間まで延長可能)

 
 

名誉毀損行為がなされた日から1年間(但し、裁判所命令で3年間まで延長可能)

 
 

 
 

不動産の返還請求

 
 

請求権が発生してから12年間

 
 

請求権が発生してから15年間

 
 

請求権が発生してから15年間

 
 

請求権が発生してから12年間

 
 

 
 

担保付金銭債権の元本返還請求

 
 

請求権が発生してから12年間

 
 

請求権が発生してから15年間

 
 

請求権が発生してから12年間

 
 

請求権が発生してから12年間

 
 

 
 

信託に関する請求

 
 

受託者の詐欺的行為に関する請求、受託者が占有する信託財産の返還請求

 
 

請求権が発生したことを知った日又は知りうべき日から12年間

 
 

時効期間の適用はなく、無期限に請求可能

 
 

時効期間の適用はなく、無期限に請求可能

 
 

請求原因が発生してから6年間

 
 

その他の信託の違反に関する請求

 
 

請求権が発生してから6年間

 
 

請求権が発生してから6年間

 
 

請求権が発生してから6年間

 
 

請求原因が発生してから6年間

 

 

債権の消滅時効は、日本法では原則として10年間ですが、上記のとおりオーストラリア法では原則として6年間となっており、日本法よりも時効期間がずっと短くなっています。但し、日本法では商事債権の消滅時効が5年間ですので、商事債権で比べると日本法の時効期間はオーストラリア法の時効期間よりも長いといえます。

2015年5月27日 (水)

履行拒否(Repudiation)による契約解除

以前に契約法に基づく契約解除には、(1)契約の根幹となる規定(Essential Term)の違反に基づく解除、(2)契約の根幹とならない規定(Non-Essential Term)の重大な違反に基づく解除、及び(3)相手方が契約の存在や拘束力を否定する行為(履行拒否 - Repudiation)を行った場合における解除、の3種類があると述べましたが、今回はこの3番目の履行拒否(Repudiation)に基づく解除について説明します。

契約違反・債務不履行(Breach of Contract)はまだ発生していないにもかかわらず、相手方が契約を履行する意思を有していないことや、契約を履行する能力を有していないことが明らかになった場合には、この履行拒否に該当し、契約を解除することができます。これは契約違反・債務不履行が未発生であっても、これから発生することが確実に予期される場合には、その予期される契約違反・債務不履行(Anticipatory Breach)に基づいて実際に契約違反・債務不履行が発生する前に契約を解除する権利を認めてしまおうという考えに基づいています。このような履行拒否(Repudiation)に基づく解除は日本法にはぴったり当てはまるものはないと思われます。

履行拒否は契約の解除という重大な効果を生じさせるものですから、履行拒否に該当するためには、契約の重要な規定(たとえば、契約の根幹となる規定)についての履行拒否であり、相手方の契約に基づく利益を失わせるようなものであることが必要となります。

履行拒否は、契約当事者の発言によって示される場合や契約当事者の行為によって示される場合があります。たとえば、契約当事者がはっきりと契約相手方に対して、今後契約上の義務を履行するつもりはないと述べれば、履行拒否となります。また、不動産の売買契約において、売主が売買実行日前に当該不動産を第三者に売却してしまった場合、売主の当該売却行為により履行拒否の意思が明確になりますので、履行拒否があったといえます。

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