独占禁止法

2019年11月16日 (土)

フランチャイズ事業に関する規制

オーストラリアでは「フランチャイズ契約」を規制するFranchising Code of ConductCompetition and Consumer (Industry Codes - Franchising) Regulation 2014 (Cth)のSchedule 1)という法律が存在しており、立場の弱いフランチャイジー側を保護するために、フランチャイズ事業には厳格な規制が課されています。

同Codeの第5条において規定されている「フランチャイズ契約」の定義に該当する場合、Franchising Code of Conductの規制が適用されることになります。

1.フランチャイズ契約(Franchise Agreement)の定義

Franchising Code of Conductが適用される「フランチャイズ契約(Franchise Agreement)」は以下のように定義されており(第5条)、以下の(a)乃至(d)の要件を全て満たす場合に該当します。

(a) フランチャイザーとフランチャイジーの間に契約があること(書面であるか、口頭であるか、黙示のものであるかを問わない)

(b) フランチャイザーがフランチャイジーに対して、フランチャイザー又はその関連者が実質的に決定し、支配し、又は提案するシステム又はマーケティングプランの下で、事業を行う権利を与えること

(c) 当該事業は、特定の商標、広告又は商業上のシンボルと十分に又は重要な点で関連付けられていること

(d) 当該事業開始前に、フランチャイジーはフランチャイザー又はその関連者に対して、支払を行い、又は支払いを行うことを合意するものであること(初期資本投資費用、商品・サービス購入代金、ロイヤルティー又はフランチャイズサービス費用、トレーニング費用など)

フランチャイズ契約にかかる規制を避けるために、先方に対して手取り足取り指導するのではなくオペレーションをある程度自由に任せることで上記のフランチャイズ契約の(b)の要件が満たされないようにするなど、フランチャイズ契約に該当しないようにする対応をとることは可能であり、実際にそのようなケースも多々あります。

2.フランチャイズ契約(Franchise Agreement)に適用される規制

「フランチャイズ契約」の定義に該当する場合に適用されるFranchising Code of Conductの規制には以下のようなものが含まれます。
・ フランチャイザーは、フランチャイズ契約の締結、更新又は延長もしくはフランチャイズ契約に関して何らかの返還不要な対価を受領するよりも14日以上前に、(1)Franchising Code of Conduct、Disclosure Document(CodeのAnnexure 1に記載事項が規定されている。フランチャイジーの財務に関する情報も含まれる。)並びにフランチャイズ契約(及びこれに付随して締結する他の契約)をフランチャイジーに提供しなければならず(Code第9条)、かつ(2)フランチャイジーがDisclosure DocumentとCodeを受領し、確認し、理解するための合理的な機会が与えられた旨の書面をフランチャイジーから受領しなければならない(Code第10条(1))

・ フランチャイザーは、フランチャイズ契約の締結前に、フランチャイジーがフランチャイズ契約やフランチャイズ事業に関して独立した弁護士、会計士、ビジネスアドバイザーからアドバイスを受けた旨のフランチャイジーの署名済書面(もしくはフランチャイジーに対してアドバイスを与えた旨の弁護士、会計士又はビジネスアドバイザーの署名済書面)、又はそのようなアドバイスを受けるように言われたがアドバイスを受けないことに決定した旨のフランチャイジーの署名済書面をフランチャイジーから受領しなければならない(Code第10条(2))

・ フランチャイザーは、フランチャイジーがフランチャイズ事業について正式な申し込みを行った場合又は興味を示した後できる限り早急に、フランチャイジーに対してInformation StatementCodeAnnexure 2のフォーマットを使用)を提供しなければならない(Code11条)

・ フランチャイザーは、(1)フランチャイザー又はフランチャイズシステムの支配権の変更(Change of Control)が発生した場合、(2)フランチャイザーに対するフランチャイズ契約の違反等のフランチャイズシステムに影響を与える一定の訴訟手続や判決がなされた場合、(3)フランチャイズシステムに重要な知的財産権又はその支配権に変更が発生した場合には、フランチャイジーに対して合理的な期間内に(ただし遅くとも14日以内に)書面通知しなければならない(Code17条)

・ フランチャイズ契約の期間終了の6ヶ月前までに(フランチャイズ契約の期間が6ヶ月未満である場合に期間終了の1か月前までに)、フランチャイザーは、フランチャイジーに対して、フランチャイズ契約を延長し、又は新たなフランチャイズ契約を締結する予定であるかを書面通知しなければならない(Code18条)

・ フランチャイズ契約では、フランチャイジーがフランチャイジーに対して負っている債務を一般的に免除する規定、又はフランチャイザーが口頭又は書面で行った表明を放棄する規定を定めてはならない(Code20条)

・ フランチャイズ契約では、フランチャイズ契約に関する紛争解決手続をオーストラリア国外で行うことを要求する規定を設けてはならず、そのような規定は無効となる(Code第21条)。

・ フランチャイズ契約では、フランチャイズ契約の下での紛争を解決した場合にフランチャイザーが負ったコストをフランチャイジーに負担させる規定を設けてはならず、そのような規定は無効となる(Code22条)

・ フランチャイズ契約に定めたフランチャイジーの競業避止義務は、フランチャイズ契約の終了後は、フランチャイジーが一定の要件を満たす場合には効力を有さない(Colde23条)

・ フランチャイジーは、フランチャイズ契約を締結した日又はフランチャイズ契約に基づく支払いを行った日のいずれか早い方から7日以内であれば、フランチャイズ契約を解除することができる(Cooling-off period)(Code26条)

・ フランチャイジーがフランチャイズ契約に違反した場合、フランチャイザーは、フランチャイジーに書面通知を出し、フランチャイズ契約を解除する意図があることを伝え、違反を治癒するためにフランチャイジーが行うべきことを知らせ、合理的な治癒期間を与える必要があること(Code第27条)

・ フランチャイザーは、フランチャイズ契約の期間中、フランチャイジーに対してフランチャイズ事業に関して重大な資本支出(significant capital expenditure)を行うことを要求してはならない(ただし、フランチャイジーが合意したもの、法令順守に必要なもの等は除く)(Code30条)

・ フランチャイジーは、フランチャイジーが支払ったマーケティング費用及び広告費用について別個の銀行口座で管理しなければならず、当該費用はDisclosure Documentで開示された項目等のために使用しなければならない(Code31条)

・ フランチャイズ契約には、フランチャイザー・フランチャイジー間のフランチャイズに関する紛争を当事者間で解決するための手続を定めておかなければならない(Code34条)。

3.違反した場合の罰則等

Franchising Code of Conductに関するオーストラリアの規制当局であるAustralian Competition and Consumer CommissionACCCです。フランチャイジーはCodeの違反についてACCCに申立てを行い、ACCCはフランチャイジーに対して違反の有無を調査します。調査の結果、違反があることが判明した場合、ACCCはフランチャイジーに対してInfringement Noticeを出して罰金を課したり、又はフランチャイジーに対して訴訟を提起することができます。

 

上記の通り、オーストラリアには厳格なフランチャイズ規制があり、規制当局によって規制は厳格に執行されているため、フランチャイジー候補とフランチャイズ契約を締結する際には、オーストラリアの弁護士のアドバイスを受けることが必要です。

なお、フランチャイズの規制に関しては、規制当局であるACCCのウェブサイトに詳しい情報が記載されていますので、詳細はそちらをご参照ください。

また、フランチャイズ事業を開始しようとしている人向けの無償のオンライン教育プログラムも提供されていますので、自分でフランチャイズ事業を行うことを考えている方は、そちらもご参照ください。

【2019123日追記:20179月に施行されたFair Work Amendment (Protecting Vulnerable Workers) Act 2017 (Cth)によってFair Work Act 2009 (Cth)が改正され、フランチャイザーがフランチャイジーの事業について相当程度(a significant degree)の影響を与えたり、支配を及ぼしている場合において、フランチャイザーがフランチャイジーによるその従業員に対する労働法違反(最低賃金の不払いなど)が発生したこと又は発生する可能性があることを知っていた又は合理的に知りうべきだったにもかかわらず、当該違反を防止するための合理的な措置を取らなかったときは、フランチャイザーは当該違反について責任を負うことになりました。】

 

2018年6月 9日 (土)

企業結合の届出(2)

以前のブログ記事で説明したとおり、豪州では、重要な市場における競争を実質的に制限する(substantially lessening competition)効果を有する、又はそのおそれのある企業結合は、豪州の独占禁止法(Competition and Consumer Act 2010 (Cth)50条等)によって禁止されています。

上記のとおり競争を実質的に制限する効果があるか否かが基準であり、企業結合によって買収者が対象会社の支配権を取得した場合(例えば、対象会社の株式の過半数を取得した場合)ではなくても、この基準を満たす場合があります。

例えば、買収者が対象会社の20%程度の株式を取得した場合であっても、買収者が対象会社の事業に影響を及ぼすことができる立場になったり、又は買収者と対象会社が戦略的提携関係に入ることによって、対象会社が関連市場において独立して事業を行っているとはいえないようになる場合には、企業結合によって競争を実質的に制限する効果が生じているか否かを検討する必要があります。

このような企業結合において競争を実質的に制限する効果があるか否かを検討する際には、買収者と対象会社の関連市場における地位(市場シェアなど)、買収者が関連市場における対象会社の事業に対して影響を及ぼすことができる能力、買収会社と対象会社の間の戦略的提携関係の内容等が考慮されます。

他方で、買収者が対象会社の20%程度の株式を取得した場合であっても、買収者にとって完全に受動的な投資であり、関連市場における対象会社の事業に影響を及ぼさない場合には、それ以上、競争を実質的に制限する効果が生じているか否かを検討する必要はないといえます。

企業結合の規制は買収者が対象会社の過半数の株式を取得した場合にのみ適用があると誤解している方がいるため、本記事で説明させていただきました。

2016年10月 3日 (月)

企業結合の届出

企業結合(株式譲渡や事業譲渡などによる企業と企業の事業統合)によって一定の分野における競争が実質的に制限されることになる場合、独占禁止法によって企業結合が禁止又は制限されるという制度は世界中に存在します。

届出義務の有無

豪州では、重要な市場における競争を実質的に制限する(substantially lessening competition)効果を有する、又はそのおそれのある企業結合は、豪州の独占禁止法(Competition and Consumer Act 2010 (Cth)50等)によって禁止されています。

独占禁止法に基づく事前の届出義務というものは存在せず、企業は当局(Australian Competition and Consumer Commission)(ACCC)の許可を受けることなく企業結合を実行することができます。但し、実行された企業結合が重要な市場における競争を実質的に制限する効果を有する、又はそのおそれがあるとACCCが考えた場合、ACCCによる申請によって、連邦裁判所から取引差止命令や反対取引命令(企業結合の解消を命じる裁判所命令)等を受ける可能性があります。したがって、事前の届出義務は存在しないものの、重要な市場における競争を実質的に制限する効果を有する、又はそのおそれがある企業結合については、企業結合の当事者は事前にACCCに対して確認を求めるのが通常です。

日本や中国では企業結合の当事者の売上金額が一定の金額を超えている等の形式的な要件を満たせば政府当局に対する事前の届出等が義務づけられるのと比較して、豪州では、届出の義務は存在せず、事前に政府当局に確認を求めるか否かは企業結合の当事者の判断に委ねられています。また、その判断の際にも売上金額等の形式的な要件ではなく、競争が実質的に制限されるか否かという実質的な要件を検討することになります。

届出の制度

事前にACCCに対して確認を求める方法として、主として、公式審査手続(Formal Merger Clearance非公式審査手続(Informal Merger Review2種類の方法があります。

公式審査手続の場合、一定の申請費用(201610月現在において25,000豪ドル)がかかりますが、ACCCが問題ないという見解を示せば、企業結合の当事者は企業結合に関して事後的に独占禁止法上の法的責任を問われなくなります。他方、非公式審査手続の場合、申請費用はかからず比較的に簡易な手続でACCCの見解を得ることができますが、このACCCの見解はあくまで非公式なものにすぎず、企業結合に関して事後的に独占禁止法上の法的責任を問われなくなるという法的効果は得られません。

公式審査手続の詳細については、こちらのACCCのガイドラインを、非公式審査手続の詳細については、こちらのACCCのガイドラインをご参照ください。

公式審査手続及び非公式審査手続のいずれについても、手続に要する時間は個別の案件毎に異なりますが、一般には23ヶ月程度はかかるとされています。 

※  なお、ACCCによる公式審査手続及び非公式審査手続の他に、Australian Competition Tribunal(オーストラリア競争審査機関)(ACT)に対して企業結合の許可(merger authorisation)を求めるという手続も存在しますが、この手続はあまり利用されておらず、ACCCの公式審査手続と役割が重複しているという批判を受けています。2015331日公表のHarper Reportでは、現在のようにACCCの公式審査手続とACTの許可申請手続が並列するのではなく、企業結合の審査に関して、ACCCが第一次審査機関、ACTが第二次審査機関(ACCCの決定に対する不服申立先)としての役割を与えられるべきことが提案されています。2014年にAGL EnergyMacquarie Generationを買収した際、及び2016年にSea SwiftToll Marineの事業の一部を買収した際において、ACTの許可申請手続が利用されていますが、これはACCCがこれらの企業結合に対して否定的な見解を示していたため、企業結合の当事者がACTの許可申請手続を利用したというものでした。

届出を行なうか否かの判断

競争が実質的に制限されるか否かという判断を行なう際には、以下のような要素が考慮されます(Competition and Consumer Act 2010 (Cth)50条第3項)。

・ 市場における実際の及び潜在的な輸入品の競争の程度

・ 市場への参入障壁の高さ

・ 市場における集中の程度

・ 市場における対抗勢力の程度

・  買収者が価格又は利鞘を著しく及び実質的に増加することができるようになる可能性

・ 市場において代替品・サービスが利用できる、又は利用できるようになる可能性の程度

・ 市場のダイナミズムの特徴(成長、イノベーション、製品の差別化を含む)

・  買収が市場から強力かつ効果的な競合業者を排除する可能性

・  市場における垂直的統合の性質及び程度

一般的な目安として、事業結合後の豪州の関連市場シェアが20%を越えるような場合には、競争が実質的に制限される可能性があると判断されるリスクが高いとして、事前の届出を行う場合が多いといえます。この20%という数値はあくまでも目安であり、関連事業の競合他社の数が少ない、買収者の企業規模や資本力により市場の競争情況に大きな影響を及ぼす可能性があるといった場合には、市場シェアが20%に満たない場合であっても競争が実質的に制限される可能性があると判断されるリスクはあります。

届出の要否を検討する際には、まずは「オーストラリアで販売又は提供されている製品又はサービスの内容」、「市場シェア」、「市場の規模」、「業豪事業者の名前及び市場シェア」といった情報を検討することになります。これらの基礎的な情報を検討した上で、競争が実質的に制限される可能性が高そうであれば、更に詳細な情報(代替製品・サービスの有無等)を検討していくことになります。